准看護師のなかには、正看護師への道を考えている人も多いでしょう。准看護師が正看護師資格を取得することで、キャリアの幅が広がったり、収入がアップしたりと多くのメリットが得られます。
この記事では、准看護師と正看護師の違いや准看護師が正看護師資格を取るための具体的な方法、働きながら学ぶためのポイントについて解説します。
キャリアアップを検討している准看護師は、参考にしてください。
准看護師と正看護師の違い
准看護師と正看護師は、どちらも看護の専門職として医療現場で働く職種ですが、資格の取得過程や種類、業務範囲において、異なる点があります。
以下の表は、正看護師と准看護師の基本的な違いを表したものです。
准看護師 | 正看護師 | |
資格の認可者 | 都道府県知事 | 厚生労働大臣 |
資格の種類 | 民間資格 | 国家資格 |
資格取得までの最短年数 | 2年 | 3年 |
業務範囲(権限・責任) | 医師・正看護師の指示のもとで行う必要がある | 自身の判断で看護業務が行える |
平均年収 | 約407万円 | 約508万円 |
キャリアアップの選択肢 | 正看護師 | 保健師・助産師・ 認定看護師など |
准看護師制度は、戦後の看護師不足を解消するための一時的な措置として創設されました。
当時は女性の高校進学率が低く、中学校卒業以上の学歴で資格を取得できる准看護師が必要とされていたのです。
ここからは准看護師と正看護師の違いについて、詳しくみていきましょう。
看護師として働くための資格には、准看護師資格と看護師資格の2種類あります。准看護師と看護師には、どのような違いがあるのか気になっている人もいるのではないでしょうか。 そこで、准看護師の資格制度や看護師との違いについて解説します。准看護[…]
業務範囲(権限・責任)の違い
准看護師と正看護師の最も大きな違いは、業務における権限と責任の範囲です。
准看護師は「保健師助産師看護師法(保助看法)」第6条で、「医師・歯科医師又は看護師の指示のもとで、傷病者若しくは褥婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行う」と定められています。
准看護師には、以下のような制限があります。
● 他の看護スタッフに対して指示を出すことができない
● 看護計画の立案は行えない
● 急変時の対応においても、自己判断ではなく医師や正看護師への報告・指示受けが必要
一方、正看護師は自己判断で看護業務を行えるほか、准看護師や看護学生への指導、看護計画の立案、緊急時の対応など、より幅広い業務権限と責任を持ちます。
また、専門看護師や認定看護師などの上位資格の取得、管理職への昇進においても、正看護師資格が求められます。
参照元:保健師助産師看護師法
給与・待遇の違い
准看護師と正看護師の間には、給与面でも差があります。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」のデータをもとに比較すると、正看護師の年収は、准看護師よりも約100万円高いことがわかります。
准看護師 | 正看護師 | |
月収 | 28万6800円 | 35万2100円 |
賞与 | 62万9500円 | 85万6500円 |
年収 | 407万1100円 | 508万1700円 |
この差は基本給だけでなく、夜勤手当にも表れます。
通勤手当・住宅手当といった業務以外の手当は准看護師も正看護師も基本的に同額ですが、夜勤手当については正看護師の手当額を高く設定する医療機関が多い傾向にあります。
給与や待遇の違いは、就業する地域や施設形態によっても変わってきます。都市部の病院や規模の大きい病院では、特に差が開きやすいでしょう。
資格取得に必要な教育課程や試験の難易度の比較
准看護師と正看護師では、資格取得までの教育課程にも大きな違いがあります。
准看護師 | 正看護師 | |
養成校の入学要件 | 中学校卒業 | 高校卒業 |
資格取得までの期間 | 2年 | 3年 |
試験の実施機関 | 都道府県 | 厚生労働省 |
合格率(過去4年) | 97〜98% | 90% |
正看護師試験が全国統一の国家試験であるのに対し、准看護師試験は各都道府県が実施する民間の試験です。
そのため、試験の実施日や合格発表日は地域によってさまざまです。
ただし、試験内容については、すべての自治体で13科目から150問が出題されるよう統一されています。
合格率を見ると、准看護師試験の方が正看護師試験よりも高いことがわかります。これは准看護師の教育課程が2年間と短い分、試験の出題範囲も限定されていることが影響しています。
一方、正看護師の教育課程は3年間で、より幅広い領域から出題されるため、深い理解と総合的な知識が求められ、結果として合格率が低くなるといえます。
参照元:
令和6年度准看護師試験の実施状況、令和5年度准看護師試験の実施状況、令和4年度准看護師試験の実施状況、令和3年度准看護師試験の実施状況、第111回保健師国家試験、第108回助産師国家試験及び第114回看護師国家試験の合格発表|厚生労働省
准看護師から正看護師になるメリット
准看護師から正看護師へとキャリアアップすることで、さまざまなメリットがあります。ここからは、准看護師が正看護師になるメリットを紹介します。
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年収アップにつながる
正看護師になる一番のメリットは、年収アップです。
准看護師の平均年収は「407万1100円」、正看護師は「508万1700円」と、正看護師の方が約100万円高い収入を得られます。
また正看護師は、認定看護師や専門看護師などの上位資格取得にも挑戦できます。これらの資格保有者に、資格手当を支給する医療機関は多く、さらなる収入アップにつながります。
加えて正看護師は管理職への昇進が可能です。主任や師長といった役職に就くことで、基本給が上がったり役職手当が支給されたりと、収入はより高くなります。
キャリアの選択肢が広がる
准看護師が正看護師になることで、さまざまなキャリアが選択できるようになります。
たとえば正看護師資格に加えて以下の資格を取得すれば、自身の興味のある専門分野で活躍できるでしょう。
● 認定看護師
● 保健師
● 助産師
また正看護師は、主任、副師長、師長、部長といった管理職ポジションを目指せます。管理職になれば、担当する部署やチームのマネジメントや病棟管理、病院運営などに携われます。
さらに、看護学校の教員や院内の実習指導者として、次世代の看護師育成に携わる道もあります。指導者は、自分の経験と知識を未来の看護師に伝えられる、やりがいのある仕事です。
このように、正看護師資格を取得することで、従来の看護業務にとどまらず、幅広い分野でキャリア形成を図れます。
転職市場での需要が高まる
正看護師資格を持つことで、就職先の選択肢も大きく広がります。
日本看護協会の資料によると、令和5年度に報告された病院求人数は以下のとおりです。
● 准看護師:4,208人
准看護師の求人数は、正看護師の約16分の1で、選択できる職場が大きく制限されることがわかります。また、正看護師のほうが給与水準や福利厚生面で優遇されるケースが多く、よりよい勤務条件での転職が可能です。
なお、大学病院や高度医療を提供する医療機関の多くは、正看護師資格を必須条件としています。専門性の高い医療機関で働きたい人には、正看護師資格が不可欠といえるでしょう。
准看護師から正看護師になるための方法
准看護師から正看護師になるためには、看護師養成所で教育課程を修了したのち、国家試験に合格する必要があります。主なルートは以下の3つです。
● 定時制3年課程:夜間や土日に授業を受け、働きながら学ぶ
● 通信制2年課程:5年以上の実務経験を積んだのち、自宅学習中心で学ぶ
現在の勤務状況、家庭環境、経済状況などを総合的に考慮して決めましょう。
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進学コースの種類と特徴を比較
准看護師になるための3つの進学コースには、それぞれ異なる特徴があります。
全日制2年課程 | 定時制3年課程 | 通信制2年課程 | |
修業年限 | 2年 | 3年 | 2年 |
授業時間 | 平日昼間 | 夜間・土日 | 自宅学習中心 |
入学条件 | 准看護師資格+高校卒業 (中卒の場合は実務経験3年以上) | 准看護師資格+高校卒業 (中卒の場合は実務経験3年以上) | 准看護師資格+実務経験5年以上 |
学費目安 | 150〜200万円 | 150〜200万円 | 100〜150万円 |
全日制2年課程は、最短で正看護師資格を取得できるルートです。平日昼間に養成所に通う必要があるため、仕事との両立がむずかしいというデメリットがあります。
定時制3年課程は、仕事を続けながら資格取得を目指せる点が最大の魅力です。一方で、3年間と長期の通学が必要で、体力的な負担は大きくなります。
通信制2年課程は、仕事や家庭との両立がしやすく、学費も100〜150万円程度と最も経済的です。ただし、自宅学習が中心となるため、高い自己管理能力が求められます。
なお、学費はあくまでも目安で、養成所や教育課程によって金額に変動があります。
参照元:
看護学科専科|栃木県立衛生福祉大学校(公式ホームページ)、医療専門課程 看護師科 – 都城看護専門学校 – 宮崎県都城市
働きながら学べる通信制・定時制課程の活用法
定時制課程では、平日の夜間や土日に授業が行われるため、日勤帯に働く看護師にとっては比較的通いやすいでしょう。
正看護師資格の取得にあたり、就学支援制度を設けている医療機関は多く、学費の補助や勤務シフトの調整、学業のための特別休暇などのサポートを受けられます。
入学前に、勤務先の上司と相談したり、人事部門に問い合わせたりし、学習期間中にどんなサポートが受けられるか確認しておきましょう。
一方、通信制課程では自宅学習が中心となるため、自己管理能力が重要です。
毎日の学習を習慣づけ、レポート提出などのスケジュール管理をしましょう。スクーリングは日程が決まっているため、職場への休暇申請を行い、参加できるよう調整する必要があります。
仕事や家庭と学業を両立するためには、家族や職場の理解を得ることが不可欠です。また、同じ目標を持つ仲間とのネットワーク作りも、モチベーション維持に役立ちます。
奨学金や助成制度の活用法
正看護師資格取得のために、活用できる経済的支援制度は複数あります。ここでは、代表的なものを紹介します。
1. 日本看護協会の奨学金制度
日本看護協会では、看護師養成所2年課程(通信制)に進学する准看護師を対象とした奨学金を提供しています。
貸与額:年間36万円または48万円
貸与期間:在学中の1年間または2年間
特徴:無利息、他の奨学金との併用可能、就業先や居住地域の制限なし
2. 各医療機関の奨学金制度
多くの病院や医療法人では、独自の奨学金制度を設けています。国家試験合格後に一定期間その職場で勤務することで、奨学金の返済が免除されるところが多いようです。
3. 都道府県の修学資金貸与制度
各都道府県でも看護師等修学資金制度を実施しています。
東京都を例に挙げると、貸与金額は月額25,000円〜100,000円で、指定の条件を満たせば返済が免除されます。
なお、一部自治体では通信制課程を制度の対象外とするところがあるため、事前に確認しておきましょう。
複数の支援制度を組み合わせることも可能です。自身の状況に合わせて検討しましょう。
参照元:
日本看護協会 看護師学校養成所2年課程奨学金、看護師等修学資金貸与事業|資格試験免許|東京都保健医療局
准看護師制度の将来性
准看護師制度は、戦後の深刻な看護師不足を解消するための緊急措置として創設された制度です。発足から70年以上が経過し、社会情勢は大きく変化しています。
現在、日本看護協会では「看護師養成制度の一本化」を目標に掲げ、医療の高度化・専門化に対応するべく、准看護師制度の見直しを進めています。
実際に、准看護師養成校数や入学者数は過去20年間で大幅に減少しており、転職市場でも正看護師の求人数が圧倒的に多くなっています。
このような状況から、准看護師制度は今後も縮小傾向が続くと予想されます。現在准看護師として働く人は、将来的な制度変更の動向に注目し、今後のキャリアを検討していくことが重要です。
看護師として働くための資格には、准看護師資格と看護師資格の2種類あります。准看護師と看護師には、どのような違いがあるのか気になっている人もいるのではないでしょうか。 そこで、准看護師の資格制度や看護師との違いについて解説します。准看護[…]
准看護師制度の課題解決に向けた取組み | 看護職の皆さまへ | 公益社団法人日本看護協会、准看護師制度について | 看護職を目指す皆さまへ | 公益社団法人日本看護協会
医療制度改革が准看護師に与える影響
少子高齢化の進む昨今、医療・介護分野の需要は拡大しており、地域包括ケアシステムの推進により、在宅医療や介護福祉施設での看護ニーズも高まっています。
准看護師は資格取得までの期間が短く学費も抑えられるため、働きながら、また子育てをしながらでも取得しやすいという特徴があります。看護職員の確保が困難な地域や事業所にとって、短期間で戦力となる准看護師は、重要な存在です。
しかし一方で、医療技術の高度化・専門化に伴い、看護業務にもより高い専門性が求められるようになってきました。またチーム医療の推進により、自律的な判断ができる正看護師への需要が高まっています。
このような変化により、専門性の高い医療現場や高度な判断を要する業務においては、正看護師が重視される傾向がより強まっていくと考えられます。
今後は准看護師と正看護師の担当業務がはっきりと分かれ、それぞれの強みを活かした働き方が定着していく可能性があります。
まとめ
准看護師から正看護師へのキャリアアップは、年収アップやキャリア選択肢の拡大など、多くのメリットをもたらします。
進学方法には全日制2年課程、定時制3年課程、通信制2年課程の3つの選択肢があり、それぞれに特徴があります。働きながら学ぶ場合は、定時制や通信制を選択し、職場の支援制度や各種奨学金を組み合わせることで、負担を軽減できるでしょう。
准看護師制度は将来的に縮小傾向にある一方、正看護師への需要は継続的に高まっています。現在准看護師として働いている人は、自身のライフスタイルや将来設計に合わせて、キャリアアップを検討してみてください。
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准看護師から正看護師へのキャリアアップを考える人にとって、職場選びは重要です。学費補助やシフト調整など資格取得支援が充実している医療機関で働くことで、働きながらの資格取得がよりスムーズになります。
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