地域医療支援病院とは?定義や役割、仕事内容、働くメリットなどを解説

地域医療支援病院とは?定義や役割、仕事内容、働くメリットなどを解説

地域医療支援病院は、地域の診療所(クリニック)や一般病院と連携し、高度な医療を提供する医療機関です。紹介患者を中心に専門的な検査・治療を提供するほか、救急医療体制の構築、地域の医療機関との医療機器の共同利用、医療従事者への研修など、多様な役割を担います。

また地域医療支援病院には、看護師が専門性を高めたり、多職種連携を学んだりと、キャリアアップを図るのに最適な環境が整っています。

この記事では、地域医療支援病院の定義や役割、看護師として働くうえでのメリット・デメリット、求人の探し方について解説します。

地域医療支援病院とは?~概要と定義~

地域医療支援病院とは?~概要と定義~

地域医療支援病院は、地域の診療所や病院から紹介された患者に対し、高度な検査や専門的な治療を提供することを主な目的としています。かかりつけ医では対応がむずかしい疾患や症状の患者に対し適切な治療を行い、地域全体の医療体制を支える役割を担っているのです。地域医療支援病院には、入院施設や高度医療機器、救急外来、専門外来などが整備されています。

また「地域医療支援病院」と称するためには、特定の基準をクリアし、都道府県知事からの承認を受けなければなりません。地域医療支援病院は全国に設置されており、令和7年1月時点で承認を受けた施設数は707院です。

参照元:
厚生労働省 医療施設動態調査

地域医療支援病院について|厚生労働省

厚生労働省令による地域医療支援病院の承認要件

地域医療支援病院と称するには、厚生労働省の定める承認要件を満たす必要があります。承認要件は次のとおりです。

開設主体:原則として国、都道府県、市町村、社会医療法人、医療法人等
紹介患者中心の医療を提供していること。
具体的には、次のいずれかの場合に該当すること。

ア)紹介率が80%以上であること
イ)紹介率が65%以上であり、かつ、逆紹介率が40%以上であること
ウ)紹介率が50%以上であり、かつ、逆紹介率が70%以上であること

救急医療を提供する能力を有すること
建物、設備、機器等を地域の医師等が利用できる体制を確保していること
地域医療従事者に対する研修を行っていること
原則として200床以上の病床、及び地域医療支援病院としてふさわしい施設を有すること  等

引用元:地域医療支援病院について 厚生労働省

“紹介率”とは「他の医療機関から紹介されて来院した患者の割合」を指します。
また“逆紹介率”は「自院から他の医療機関へ紹介した患者の割合」を表します。具体的な計算方法は次のとおりです。

● 紹介率=紹介患者数÷初診患者数×100
● 逆紹介率=逆紹介患者数÷初診患者数×100

なお、初診患者数を算出する際、救急車での搬送、診療時間外の受診、健康診断を目的とした患者は含まれません。

これらの基本的な要件に加え、各都道府県が独自に規定事項を設けている場合もあります。地域ごとの規定には、その地域特有の医療ニーズや課題が反映されているのです。

また地域医療支援病院としての承認を受けるためには、医療機関の開設主体が個人ではなく、国・都道府県・市区町村・医療法人・社会医療法人といった法人であることが前提条件となります。

地域医療支援病院の役割とは?

地域医療支援病院の役割とは?

地域医療支援病院には、厚生労働省が示す制度概要に基づき、4つの重要な役割が定められています。

  1. かかりつけ医・その他病院からの紹介患者に対する医療提供
  2. 救急医療の提供
  3. 近隣医療機関との医療機器・入院設備などの共同利用
  4. 地域の医療従事者に対する研修会の実施

ここからは、それぞれの役割について見ていきましょう。

1:かかりつけ医・その他病院からの紹介患者に対する医療提供

地域医療支援病院の中心的な役割は、地域のかかりつけ医との連携による医療の提供です。患者はまずかかりつけ医を受診し、「より詳細な検査や高度な治療が必要である」と判断された場合に、地域医療支援病院の受診を勧められます。

地域医療支援病院では、かかりつけ医から紹介された患者に対して専門的な検査や治療を行い、症状が安定したのちに、再びかかりつけ医へ逆紹介します。この流れにより、地域の住民が継続的に医療を受けられる仕組みを実現しているのです。

このように、地域医療支援病院とかかりつけ医とが連携しあうことで、地域医療全体の効率化と質の向上が図られています。

2:救急医療の提供

地域の救急医療の中核的存在である地域医療支援病院は、24時間体制で救急患者を受け入れます。
院内には「集中治療室(ICU)」や「高度治療室(HCU)」といった重症患者に対応するための病床、高度な救急治療機器が整備されています。

また地域医療支援病院には、救急医療に専従する医師や看護師などの医療スタッフを適切に配置することも求められています。緊急時に迅速かつ適切な治療が行える体制を常に維持し、地域住民の生命と健康を守るためです。

このように地域医療支援病院は、地域全体の救急医療を支える役割も担っているのです。

3:近隣医療機関との医療機器・入院設備などの共同利用

地域医療支援病院には、自院が保有する高度医療機器や入院設備を地域の他の医療機関と共同で利用できる体制の構築も求められます。

たとえば、MRIやCTなどの大型医療機器の導入・維持には多額のコストがかかります。地域医療支援病院がこれらを所有し共同利用の体制を整えることで、中小規模の医療機関でも最新の医療機器を活用した検査・診療が可能となるのです。

この共同利用システムにより、地域全体において、患者の検査の待ち時間短縮や診断精度の向上が実現します。

4:地域の医療従事者に対する研修会の実施

地域医療支援病院は、地域の医療水準全体を向上させる役割も担っており、さまざまな研修会や勉強会を開催しています。研修会では、最新の医療技術や知識の共有、症例検討などが行われ、地域の医師や看護師をはじめ、地域の医療従事者全体のスキルアップに貢献しているのです。

また地域医療支援病院は、看護学校や医学部の実習生を受け入れる教育機関としての役割、地域の保健医療活動への支援といったことも担います。
こうした取り組みを通じて、地域全体の医療従事者の知識やスキルの向上を図ります。

地域医療支援病院と特定機能病院の違いとは?

医療法で、ある一定の機能を持つ病院と位置づけられる“地域医療支援病院”と“特定機能病院”。どちらも国や地域の医療において重要なものですが、その目的や要件には違いがあります。

主な違いについては以下の表のとおりです。

地域医療支援病院

特定機能病院

役割

・かかりつけ医からの紹介患者への医療提供
・救急医療の提供
・地域の医療機関との医療機器の共同利用
・医療従事者への研修など

・高度な医療の提供
・高度医療技術の開発・評価
・高度医療に関する研修など

設立方法

都道府県知事が承認

厚生労働大臣が承認

主な要件

・かかりつけ医からの紹介患者を中心とした医療
・救急医療体制
・地域の医療機関との医療機器等の共同利用体制
・地域の医療従事者への研修
200床以上の病床

・他の病院または診療所からの紹介患者を中心とした医療
・特定の16科以上の診療科の設置
・専門医の配置
・医療安全管理体制の整備
400床以上の病床

病院数

707病院(令和71月時点)

88病院(令和74月時点)

地域医療支援病院は、かかりつけ医と連携しながら、身近な地域での医療提供体制を強化することを目的としています。一方、特定機能病院は、最先端の高度医療を提供・開発し、全国の医療水準の向上を図る役割を担います。

地域医療支援病院の数が特定機能病院よりも多いのは、地域住民が地元で専門医療を受けられるよう、全国各地に拠点を設けているためです。一方、特定機能病院は、主に大学病院や国立高度専門医療研究センターなど、高度な研究能力と医療技術を持つ施設に限られています。

参照元:
地域医療支援病院について|厚生労働省
特定機能病院について|厚生労働省

地域医療支援病院で働くメリットとは?

地域医療支援病院で働く看護師には、さまざまなメリットがあります。ここでは、看護師がキャリアを築くうえでのメリットについて見ていきましょう。

1:地域医療や他職種との連携を学ぶことができる

地域医療支援病院では、患者の紹介・逆紹介を通じた医療機関同士の連携、院内・院外でのチーム医療が日常的に行われています。

看護師は医師だけでなく、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、地域のケアマネジャーなど、多くの専門職と協力して患者のケアに携わることになります。このような多職種連携の経験は、各専門職の役割や視点を学ぶきっかけとなるでしょう。

他職種との連携を通して、看護師自身も視野が広がり、患者のケアをより総合的に行えるようになります。また、こうしたチーム医療の経験は、看護師として働くうえで大きな強みとなりえます。

2:教育・研修制度が充実している

地域医療支援病院の承認要件のひとつに「地域の医療従事者への研修を施行すること」があげられます。そのため、院内の教育・研修体制が充実していることもメリットです。

看護師は、定期的に開催される研修会や勉強会に参加することで、日常業務だけでは得られない専門知識や最新の医療情報を学ぶことができます。
また症例検討会では、実際の事例をさまざまな視点で分析し、臨床における判断能力の向上を図ります。多くの症例について話し合う、また他の看護師の視点を知ることで、日々の看護実践に応用がきくようになるでしょう。

多くの地域医療支援病院では、看護師のキャリアに応じた段階的な教育プログラムが整備されており、新人看護師からベテランナースまで、一人ひとりの経験やキャリアプランに合わせ、専門性を高められる環境が整っています。

3:待遇面が整っていることが多い

地域医療支援病院は、開設主体が公的機関や医療法人などに限定されており、原則として200床以上の病床を有します。こうした規模の大きな病院は経営基盤が安定しており、スタッフの待遇面も充実している傾向にあります。

具体的には、各種手当が整備されていたり、夜勤体制や休暇取得についてもスタッフが働きやすいように配慮されていたりといった内容です。また職員数が多いことから、シフト調整がしやすく、ワークライフバランスを重視した働き方が実現できる環境も整っています。
福利厚生面では、院内保育所や職員寮の設置、資格取得支援制度など、長く働き続けるための支援体制が整備されているところが多いでしょう。

待遇面が充実していれば、安心して働き続けることができます。看護師が長期的なキャリア形成を目指すうえで大きなメリットであるといえます。

地域医療支援病院で働くデメリットとは?

地域医療支援病院で働くメリットがある一方で、課題やデメリットも存在します。看護師として働く際に、事前に知っておきたい2つのデメリットについて解説します。

1:入退院や急患対応が多く忙しい

地域医療支援病院は、かかりつけ医では対応できない疾患・状態の紹介患者を受け入れます。そのため、病状が重篤な患者も多く、入退院が頻繁です。患者の入れ替わりに伴い、業務量も増加します。

とくに入院時には、患者情報の収集、初期アセスメント、看護計画の立案など多くの業務が集中します。
退院時には、退院指導や退院サマリーの作成、地域の関係者への情報提供など、きめ細かな対応が求められるでしょう。

また救急医療が整備されている地域医療支援病院では、夜間や休日の急患対応が多いことも特徴です。予定外の緊急対応が発生すると、業務の流れが中断され、心理的・身体的な負担が大きくなることもあります。

このような業務の特性から、多忙によるストレスや疲労の蓄積が大きくなるというデメリットが考えられます。

2:都道府県に応じた任務を果たさなければならない

地域医療支援病院の承認権限を持つ都道府県知事は、各地域の医療事情や課題に応じ、病院に対して独自の責務を課すことができます。そのため、同じ地域医療支援病院でも、地域によって求められる役割や対応すべき医療ニーズが異なります。

たとえば、感染症対策の拠点として指定された地域医療支援病院では、感染症患者の受け入れと治療を積極的に行う責務があります。また、災害拠点病院としての機能を併せ持つ場合は、災害時の対応訓練や備蓄管理なども必要になるでしょう。

こうした地域特有の任務は、通常の業務に加えて果たさなければなりません。ときには看護師の業務負担が増加することもあるでしょう。

地域医療支援病院での勤務に向いている人の特徴

地域医療支援病院での勤務に向いている人の特徴

地域医療支援病院での勤務には、以下のような看護師が向いているといえるでしょう。

● 大規模な病院で救急や急性期看護を学びたい人
● 地域医療に関心がある人

地域医療支援病院には、原則200床以上の病床を持つこと、救急医療の提供を行うことが定められています。そのため、日常的に二次救急医療や急性期医療が提供されています。

実際に行われる看護業務は、一般的な急性期病院と大きく変わりません。
しかし、症例数が多く、さまざまな疾患の患者に接する機会があるといえるでしょう。高度医療機器を用いた診療も日常的に行われるため、最新の医療技術や看護ケアを学ぶ環境も整っています。

また地域医療支援病院では、紹介患者を多く受け入れており、病状安定後はかかりつけ医に逆紹介を行うことから、地域の医療機関との連携が不可欠です。院内だけでなく、地域の訪問看護師やケアマネジャーなど、院外の専門職と連携する機会も多くなるため、地域医療に貢献したい人にもやりがいを感じられる環境です。

地域医療支援病院で働くには?

現在、全国に約700の地域医療支援病院がありますが、それぞれ開設主体や病院規模、診療科目や病棟構成は大きく異なります。自分に合った求人を探すためのポイントを紹介します。

まず、働きたい地域を絞ります。自身の生活環境や通勤可能な範囲を考慮したうえで、その地域にどのような地域医療支援病院があるか調査してみましょう。厚生労働省のウェブサイトでは、都道府県別の地域医療支援病院の一覧が確認できます。

次に、各病院の採用情報を確認します。地域医療支援病院は比較的規模の大きな病院が多く、病院の公式ホームページで採用情報を公開していることが一般的です。また、定期的に採用説明会や見学会などを開催しているところも多いので、参加してみるとよいでしょう。

自分の希望するキャリアプランに合った病院を見つけるためにも、慎重に情報収集し、十分に比較検討することが大切です。

まとめ

この記事では、地域医療支援病院の定義や役割、看護師として働く際のメリット・デメリット、求人の探し方について解説しました。

地域医療支援病院は、地域医療の中核を担う医療機関です。地域の医療体制を整えるため、かかりつけ医と連携し紹介患者に専門的な検査・治療の提供、地域の医療機関との医療機器の共同利用、医療従事者への研修など、多岐にわたる役割を担います。

急性期医療を学びたい人、地域医療に興味がある人、そして専門性を深めてキャリアアップを目指したい看護師にとって、やりがいを感じられる職場となるでしょう。

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