クレアチニンクリアランスは、腎臓の機能を調べるために用いられる検査指標の一つです。クレアチニンという老廃物の排泄状況から、腎臓が血液をどれだけろ過できているかを推定します。
この記事では、計算方法や正常値の目安、異常値が示す疾患、臨床での検査手順、eGFRとの違いについて解説します。
クレアチニンクリアランスとは
クレアチニンクリアランス(CCr)とは、血液中に含まれるクレアチニンが、腎臓によってどれだけろ過(クリアランス)され、尿中に排泄されたかを示す検査手法です。
具体的には、一定時間内に腎臓が血液からクレアチニンをどれだけろ過したかを算出することで、腎機能の状態を評価します。
この指標を使うと初期の腎機能低下も検知できるため、慢性腎臓病の早期発見や薬剤投与量の調整時などに活用されます。
計算方法
クレアチニンクリアランス(CCr)は、尿中クレアチニン濃度(U:mg/dL)、尿量(V:mL/min)、血清クレアチニン濃度(S:mg/dL)、体表面積(A:m2)をもとに以下の式で算出します。
※1.73m2=日本人の平均対表面積(日本腎臓学会)
この式により、腎臓が一定時間内に血液をどれだけろ過できるかを推定できます。
クレアチニンとは
クレアチニンは、筋肉に多く含まれるクレアチンやクレアチンリン酸が代謝されることによって生じる老廃物です。クレアチニンは、血液中に放出されたあと腎臓でろ過され、再吸収されずにそのまま尿中に排泄されます。
そのため、血中クレアチニン濃度の上昇は、腎機能の低下を示す重要な指標なのです。基準値の目安は、男性で1.2mg/dL以下、女性で1.0mg/dL以下で、透析が検討される目安は8.0mg/dL前後とされています。
ただし、産生量は筋肉量や年齢によって値に幅があるため、総合的な評価が必要です。
参照元:日本臨床検査専門医会|クレアチニンとクレアチニンクリアランス
クレアチニンクリアランスの正常値の目安
クレアチニンクリアランスの正常値の目安は、以下の通りです。(Jaffe法)
年齢 | 男性(mL/min) | 女性(mL/dl) |
40歳以下 | 116.5±5.1 | 115.0±3.9 |
41〜50歳 | 109.7±5.1 | 92.0±4.1 |
51〜60歳 | 97.6±5.5 | 83.5±4.6 |
61〜70歳 | 96.1±6.0 | 78.1±3.2 |
71歳以上 | 85.0±6.5 |
参照元:国立大学法人岡山大学|クレアチニンクリアランス,CCr(Creatinine Clearance)
数値は年齢、性別、筋肉量や体格の違いによっても個人差が生じ、特に加齢とともに低下傾向となります。そのため、測定値だけでなく全身状態や他の検査結果とあわせて評価することが大切です。
クレアチニンクリアランスの異常値を示す疾患とは
クレアチニンクリアランスの低下は、腎機能の障害を示す重要なサインです。一時的な脱水や心不全のほか、以下のような疾患が疑われます。
● 腎不全
● 糸球体腎炎
● 糖尿病性腎症
● 高血圧性腎障害など
これらの疾患により、腎臓のろ過機能が低下すると、老廃物の排泄がうまく行われなくなります。
一方で、妊娠や発熱、激しい運動後、脱水などでは、一時的に高値となるケースもあります。
クレアチニンクリアランスの数値には、生活背景や全身状態が関係するため、他の検査結果や臨床所見とあわせ、総合的に判断する必要があります。
クレアチニンクリアランスにおける2種類の検査方法
クレアチニンクリアランスの測定には、採尿時間の異なる“短時間法”と“24時間法”の2種類があります。いずれも腎臓のろ過機能を評価する目的で実施され、患者さんの状態に応じて使い分けられます。
①短時間法
短時間法の手順は、以下の通りです。
手順 | 内容 |
1 | 飲水(500mL)後、60分で排尿し、時刻を記録する |
2 | 開始30分後に採血(1mL以上)する |
3 | 開始1時間後に再度排尿し、尿量と時刻を記録する |
4 | 採血・蓄尿の一部を検査機関に提出する |
この方法は約2時間と短時間で結果が得られるため、入院患者や外来での簡易的な腎機能評価に用いられます。
ただし、食事制限や排尿・採血のタイミングが重要で、患者さんへの検査説明と記録管理が欠かせません。
②24時間法
24時間法の手順は、以下の通りです。
手順 | 内容 |
1 | 朝、定刻に排尿させて捨てる |
2 | その後の尿を翌朝の同時刻まで全量蓄尿する |
3 | 蓄尿後はよく混ぜて総尿量を測定し、5mLを提出する |
4 | 食事前または空腹前に採血(約3mL)する |
5 | 採血スピッツを検査室に提出する |
蓄尿と血清クレアチニンの値をもとに、クレアチニンクリアランスを算出します。
24時間法は、日常生活下での腎機能をより正確に評価できるものの、採尿忘れや漏れがあると検査精度が落ちるため、患者さんの理解と協力が不可欠です。
eGFRとの違い
クレアチニンクリアランス(CCr)とeGFRはいずれも腎機能を評価する指標ですが、いくつかの違いがあります。
CCrは、尿中および血中のクレアチニン濃度から算出される実測値で、採尿が必要です。一方、eGFR(推算糸球体濾過量)は、血清クレアチニンの値・年齢・性別などから計算される推定値で、採尿は不要です。
eGFRは「1分間にどれくらいの血液をろ過して尿を作れるか」を示し、この値が低いほど腎機能が低下していると評価されます。
慢性腎臓病(CKD)の診断やスクリーニングに広く使われますが、筋肉量が極端に多い、または少ない人、急性腎障害では精度が落ちることがあり、状況に応じてCCrと使い分けることが大切です。
参照元:全国健康保険協会|血清クレアチニン・eGFRって何者?
クレアチニンクリアランス検査を実施する時の患者さんへの声かけ
クレアチニンクリアランス検査では、正確な蓄尿が必要なため、患者さんへの丁寧な説明と声かけが重要です。
以下は、患者さんへの声かけの例です。
患者さんの不安を和らげ、協力を得るために、丁寧かつ具体的な説明を心がけましょう。
まとめ
クレアチニンクリアランスは、腎機能を評価するうえで欠かせない検査です。クレアチニンの排泄状況をもとに腎臓のろ過能力を推定し、疾患の早期発見や重症度の判断に役立ちます。
看護師として、検査の目的や手順、患者さんへの声かけについて正しく理解しておくと、患者さんの不安を軽減させられるだけでなくスムーズに検査ができ、現場での質の高いケアにつながります。
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