看護師の働き方には「夜勤専従」といった選択肢があり、病院や介護福祉施設で一定の需要があります。
「日勤ばかりだと検査や手術、入退院の対応などが多く、疲れてしまう」「不規則な交代制のシフトがつらい」「夜勤のほうが向いている」という場合、夜勤専従としての働き方を検討する人もいるのではないでしょうか。
この記事では、夜勤専従の働き方、仕事内容やスケジュール、夜勤専従として働くメリット・デメリットを解説します。夜勤専従として働くことを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
夜勤専従看護師とは
まず、夜勤専従看護師の働き方や仕事内容について解説します。
夜勤を専門に行う看護師
夜勤専従看護師とは、日勤などを行わず、夜勤だけに従事する看護師のことです。
一般的に、病院勤務の看護師は24時間体制で入院患者のケアを行うため、日勤と夜勤の交代制で働いています。しかし、家庭の事情や体調面の不安などによって、夜勤ができない看護師は少なくありません。
夜勤専従看護師は、夜勤の人手不足解消、夜間の救急対応に備えるなど、需要の高い働き方だと言えます。
2通りの働き方がある
夜勤専従看護師には、2通りの働き方があります。ひとつは夜勤専門の正社員(常勤)として働く方法、もうひとつはパート(非常勤)で働く方法です。
一般的に、看護師の夜勤は「二交代制」と「三交代制」に分けられます。
二交代制とは、勤務時間を日勤・夜勤の2つ、三交代制は日勤・準夜勤・深夜勤の3つに分けた勤務形態のことです。
1日の勤務時間は、二交代制では16時間程度、三交代制では8時間程度になります。
夜勤専従の勤務回数は?
夜勤専従の勤務回数について、日本看護協会は「月144時間以内」にすることを推奨しています。一般的に夜勤専従常勤の勤務は二交代制では月9~11回、三交代制では準夜勤・深夜勤あわせて月15回程度ですが、実際の回数は勤務先によって異なります。
参照元:公益社団法人 日本看護協会|労働に関するよくあるご質問 3. 夜勤・当直/オンコール Q.5
勤務時間の上限
日本看護協会が2013年に発表した「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」では、夜勤専従者の総夜勤時間は月144時間以内、連続夜勤は2回までとされています。
また日本看護協会は1勤務の拘束時間を13時間以内、次の勤務との間隔は11時間以上とし、十分な休息を取ることを推奨しています。
無理のない働き方をするためにも、募集要項で夜勤の勤務時間の上限を超えていないか、しっかり確認しておきましょう。
参照元:公益社団法人 日本看護協会|看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン
夜勤専従看護師の仕事内容
夜勤専従看護師の仕事内容は、主に以下のようなものが挙げられます。
● 食事の介助
● 投薬
● 口腔ケア
● オムツ交換やトイレ介助
● ナースコール対応
● 巡視
二交代制の場合は、翌朝のケアも担当します。
夜勤帯は医師からの指示受けもほとんどなく、患者は寝ているため、比較的落ち着いて仕事ができるでしょう。
ただし、職場によっては、手術やカテーテル検査などが終わった患者のケアをしたり、点滴を管理したり、緊急入院を受け入れたりするケースもあります。
高いスキルが求められる
夜勤専従看護師には、高いスキルが求められることがあります。
一般的に、病院の夜勤では看護師1〜2名、ヘルパー1〜2名と、日勤に比べて少ない人数で対応しなければなりません。
そのため、急変や緊急入院といった事態にも対応できる能力や、業務の優先順位を判断する冷静さが必要になります。
例えば看護師2名、ヘルパー1名の3人体制の二交代夜勤の場合、ほかのスタッフが仮眠休憩に入っている間、ナースコール対応や排泄介助など、1人で患者のケアを行わなければならない時間があります。
万が一患者が転倒したのを発見した場合、仮眠休憩中のスタッフを起こすべきか、自分1人でも対応可能か、判断しなければなりません。
夜勤専従看護師には、患者の症状や状況に合わせた処置や対応が必要なため、幅広い知識やスキルが求められるでしょう。
夜勤専従常勤の給与相場は?
夜勤専従常勤として働く看護師のモデル収入は、厚生労働省と日本看護協会の調査をもとに試算すると、月収44.5万円、年収612万円となります。
平均月収 | ボーナス | 推定年収 |
44.5万円 | 77.3万円 | 約612万円 |
令和5年度の厚生労働省の統計調査によると、看護師の月の平均給与は343,010円でした。日本看護協会の調査では、二交替勤務の1回あたりの夜勤手当は平均11,368円で、月9回夜勤をした場合には102,312円が加算され、月収は約44.5万円になります。
これにボーナス(賞与)77万3,333円を加えると、年収はおよそ612万円となります。
なお、夜勤手当の金額や回数は勤務する施設によって差があります。たとえば夜勤手当が高めの病院で月12回勤務した場合には、年収が650万〜700万円になるケースもあります。
求人情報を見る際は、夜勤手当の「1回あたりの金額」と「月あたりの回数(平均・上限)」の両方を確認しておきましょう。
参照元:厚生労働省e-Stat|賃金構造基本統計調査 / 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 、公益社団法人 日本看護協会|2023年病院看護実態調査報告書 P31
夜勤専従パート(非常勤)の給料目安は?
夜勤専従パートの給与は、時給ではなく、1夜勤あたりの手当総額が設定されていることが多く、手当総額には深夜労働手当や時間外勤務手当が含まれます。
二交替制の夜勤手当の相場は、1回25,000~40,000円程度(自社調べ)です。
就業する地域や施設形態、保有資格によって差はあるものの、月4回の勤務で10万~16万円、月8回で20万~32万円の収入が得られます。
夜勤専従看護師の勤務スケジュール
夜勤専従看護師の勤務スケジュールは、二交代、三交代いずれかによって異なります。また、職場の状況によっては時間どおりに業務を進められなかったり、就業時間に退勤できなかったりするケースが考えられます。
ここでは、夜勤体制ごとの出勤から退勤までの一般的なスケジュールを解説しますので、参考にしてください。
二交代制
二交代制は、日勤8:00〜17:00、夜勤16:00〜9:00といった勤務時間が一般的です。二交代制夜勤の代表的なスケジュールは、以下のとおりです。
時間 | 業務内容 |
16:00〜 | 出勤、点滴や内服薬の確認、準備 情報収集 |
16:30〜 | 日勤看護師からの申し送り |
17:00〜 | 巡回、バイタルチェック、点滴 食前薬の投薬、血糖チェック |
18:00〜 | 夕食配膳、食事介助、投薬 口腔ケア |
19:00〜 | 巡回、バイタルチェック、点滴 トイレ介助、記録など |
20:30〜 | 就寝準備、就寝前の投薬、血糖チェックなど |
21:00〜 | 消灯、休憩 |
22:00〜 | 病棟内巡回、点滴交換、体位交換 ナースコール対応、トイレ介助 看護計画の評価など 交代で仮眠 |
5:00〜 | 食事休憩 採血・採尿準備など |
6:00〜 | 起床、バイタルチェック、採血、採尿 点滴交換など |
7:00〜 | 口腔ケア、トイレ介助、記録など |
7:30〜 | 食前薬の投薬、血糖チェック |
8:00〜 | 朝食配膳、食事介助、投薬 口腔ケア、記録 |
8:30〜 | 日勤看護師へ申し送り |
三交代制(準夜勤)
三交代制の準夜勤は、16:00〜24:30といった勤務時間が一般的です。三交代制の準夜勤の代表的なスケジュールは、以下のとおりです。
時間 | 業務内容 |
16:00〜 | 出勤、点滴や内服の確認、準備 |
16:30〜 | 日勤看護師からの申し送り |
17:00〜 | 巡回、バイタルチェック、点滴 食前薬の投薬、血糖チェック |
18:00〜 | 夕食配膳、食事介助、投薬 口腔ケア |
19:00〜 | 巡回、バイタルチェック、点滴 トイレ介助、記録など |
20:30〜 | 就寝準備、就寝前の投薬、血糖チェックなど |
21:00〜 | 消灯、休憩 |
22:00〜 | 病棟内巡回、点滴交換、体位交換 ナースコール対応、トイレ介助 記録など |
24:00〜 | 夜勤看護師へ申し送り |
三交代制(夜勤)
三交代制の夜勤は、0:00〜9:00といった勤務時間が一般的です。三交代制の夜勤の代表的なスケジュールは、以下のとおりです。
時間 | 業務内容 |
0:00 | 出勤、点滴や内服薬の確認、準備 準夜勤看護師から申し送り |
0:30〜 | 病棟内巡回、点滴交換、体位交換 ナースコール対応、トイレ介助など 交代で仮眠 |
5:00〜 | 食事休憩 採血・採尿準備など |
6:00〜 | 起床、バイタルチェック、採血、採尿 点滴交換など |
7:00〜 | 口腔ケア、トイレ介助、記録など |
7:30〜 | 食前薬の投薬、血糖チェック |
8:00〜 | 朝食配膳、食事介助、投薬 口腔ケア、記録 |
8:30〜 | 日勤看護師へ申し送り |
夜勤専従看護師の3つのメリット
夜勤専従看護師として働くメリットとして、以下3つが挙げられます。
● 日中に自由な時間を取れる
● 業務の負担が少ない
それぞれ解説します。
日勤よりも給与が高い
夜勤専従看護師のメリットのひとつは、固定給に加えて夜勤回数に応じた「夜間看護手当」が常につくため、日勤よりも給与が高くなることです。
また、22時〜5時の間に勤務した場合の手当は「夜勤手当」として加算支給するよう、労働基準法で定められています。「夜勤手当」は、対象給与額の25%相当の割増賃金です。そのため、勤務先によっては「夜間看護手当」とは別に、「夜勤手当」が支給されるケースがあります。
日本看護協会では、夜勤専従看護師の1ヶ月の夜勤勤務時間に関して、以下のように述べています。
例えば、1日16時間勤務の二交代制の場合、月144時間の上限では144時間÷16時間=9回となり、月に9回の夜勤が上限です。
夜勤専従看護師として働けば月の勤務日数も少なくなるので、効率よく収入アップが見込めるでしょう。
日中に自由な時間を取れる
夜勤専従看護師は、日中に自由な時間が取れることもメリットのひとつです。勤務終了後は、平日の日中でも、趣味や勉強に費やしたり、子育て中であればPTA行事に参加したり、時間を有効に使えます。
また、市役所や銀行など、土日祝日に窓口が閉まっている場所にも行きやすくなるでしょう。
業務の負担が少ない
夜勤専従看護師は、日勤帯で働く看護師と比べると、業務の負担が少なくなります。例えば、以下のような日勤業務を行う必要がないため、勤務時間内の看護業務に専念できるでしょう。
● 清潔ケア
● オムツ交換・体位交換
● 包帯交換・処置
● Dr.からの指示受け、スタッフへの共有
● 入退院の対応
● カンファレンス
● 他職種との関わり
● 家族への対応
● 委員会や勉強会への参加
夜勤専従で働く4つのデメリット
夜勤専従看護師として働くことには、デメリットも存在します。
おもに体調管理の難しさやキャリアアップの機会の少なさ、勤務先の選択肢の制限が挙げられます。
また、夜勤帯は患者さんと触れ合う時間が少なく、一人ひとりの状況把握やスタッフ間の情報共有もしにくい傾向にあります。
体調を崩しやすい
夜勤専従看護師のデメリットとして、体調を崩しやすいことが挙げられます。夜勤専従では、日勤と夜勤が不規則に割り当てられることがありません。一旦夜勤専従として働き始めると、ほぼ同じ時間に出勤・退勤となるため、生活リズムが一定になります。
しかし、体が夜型生活に慣れないうちは、昼間に質のよい睡眠が取れなかったり、寝不足のまま長時間夜勤をしたりする可能性があります。
日によって、急変や緊急入院、頻回のナースコール対応などにより仮眠が取れず、疲労が蓄積し、体調を崩しやすくなることもあるでしょう。
夜勤専従看護師として働く場合、勤務明けはしっかり休養し、疲労を残さないようにするなど、体調管理が大切です。
スキルアップやキャリアアップにつながりにくい
夜勤専従看護師は、スキルアップやキャリアアップにつながりにくい点がデメリットのひとつです。
少人数で対応しなければならない夜勤専従看護師には、高いスキルが求められます。その一方で、業務内容や身に付けられるスキルが偏ってしまいます。
また、日中行われる勉強会やラダーなどに参加できず、キャリアアップにもつながりにくくなるでしょう。
スキルアップやキャリアアップを望む場合は、夜勤専従看護師として働く目的や期間を決めておき「なんのために、いつまで夜勤専従として働くのか」を明確にしておきましょう。
常勤で働ける場所が少ない
夜勤専従とは、夜勤のみの働き方で、雇用形態は常勤・非常勤を問わないとされています。とはいえ、ほとんどが非常勤での採用で、常勤で働ける場所が少ない傾向にあります。
常勤として働ける夜勤専従看護師の求人を探していると、転職期間が長引く可能性があるため、注意が必要です。
患者さんと触れ合う時間が少なく、状況を把握するのがむずかしい
夜間は患者さんの睡眠を優先するため、看護ケアの提供は必要最低限に留めることが求められます。日中のように患者さん一人ひとりとじっくり関わる時間が取れない分、患者さんの症状や生活背景を把握しにくい傾向にあります。
また看護計画の見直しや評価は、日勤スタッフに任せる場面も多くなります。
そのためにも申し送りや記録といった情報共有がより重要になります。チームで連携しながら、情報のギャップを補っていくことが大切です。
まとめ
今回は、夜勤専従看護師の働き方、仕事内容やスケジュール、夜勤専従として働くメリット・デメリットを解説しました。
夜勤専従看護師には、二交代制と三交代制の2通りの働き方があり、日勤に比べて業務内容の負担は少なくなります。ただし、少人数体制での勤務なので、求められる知識やスキルは高く、幅広い対応力が必要とされます。
夜勤専従看護師として働くためには、まずは非常勤として業務に慣れることから始めましょう。病院事情を把握している転職エージェントを活用すれば、負担の少ない職場が見つかりやすくなります。
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