介護保険サービスのひとつであるデイサービス。病院における看護師の仕事はイメージしやすくても、介護分野での看護師の役割や仕事内容について、イメージできないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、デイサービスの特徴や看護師の仕事内容、給与事情などについて、詳しく解説します。デイサービスで働きたいと考えている看護師は、参考にしてみてください。
デイサービスの基本知識と特徴
デイサービスは介護保険サービスのひとつで、正式名称は「通所介護」です。ここでは、デイサービスの役割と提供するサービスについてみていきましょう。
デイサービスの役割と主なサービス内容
デイサービスは要支援・要介護認定を受けた高齢者のうち、自宅で生活する人(一部、有料老人ホームやサ高住の入居者を含む)を対象とした日帰りの介護サービスです。
主なサービスは、昼ご飯やお風呂をはじめとした日常生活支援、趣味活動やレクリエーションなどの余暇活動、機能訓練の実施といった内容です。
● レクリエーション…脳トレ・ゲーム・音楽療法・料理など
介護や見守りが必要で気軽に外出できない、つい家にこもりがちという高齢者に、毎日の楽しみや生きがい再発見、仲間づくり、社会参加の機会を提供します。と同時に、介護を担う家族の心身両面の負担軽減(レスパイト)をアシストしています。
多くの施設は1日滞在型ですが、1回約3hの短時間滞在型で、機能訓練のみを提供する“リハビリ特化型デイサービス”も増えています。
デイケアとの違い
デイサービスと混同しやすい介護保険サービスに“デイケア”があります。
デイケアもデイサービスと同様に、自宅で生活する高齢者を対象とした通所型の介護サービスです。ただしデイケアを利用できるのは、医師から「通所が必要」と診断された人のみです。またデイケアの運営は医療法人か個人医師に限定されます。そのため、多くの施設は病院やクリニック・老健に併設されています。
デイサービスもデイケアも大きな違いはないものの、デイケアでは理学療法士や作業療法士などリハビリ専門職が機能訓練を行います。その分、リハビリ要素が強いといえるでしょう。
デイサービスにおける看護師の仕事内容と役割
デイサービスにも看護師の配置基準があり、「利用者の定員が10名を超える場合は、1名以上の看護師の配置すること」が求められています。
ここでは、デイサービスで働く看護師の仕事内容や役割についてみていきましょう。
利用者の健康管理
デイサービスで働く看護師の役目は、利用者さんの健康管理全般です。主にバイタルチェックを通した健康状態の把握や服薬管理を担います。具体的な内容は、次のとおりです。
● 食前・食後の配薬
● 入浴前後の処置(傷口の保護、浴後の軟膏塗布など)
● 本人・家族への健康指導
● 緊急時の応急処置
● 看護記録
医療的ケアの範囲と具体例
利用者さんのなかには医療的ケアの必要な人もおり、看護師はその処置も行います。具体的には次のとおりです。
● 胃ろう管理(経管栄養)
● 尿管カテーテルの管理(テープ固定や尿の廃棄)
● 人工肛門の管理(ストマの固定・交換)
● 在宅酸素療法の管理
● 非侵襲的陽圧換気の管理(Bipap)
デイサービスは医療機関ではないため、医療行為は提供しません。ただし高齢者の多くは持病があり、服薬している人がほとんどです。また誤嚥や転倒などをきっかけに、大事に至ることもありえます。
そのため、医療機関で働くなかで得た看護知識やスキルを活かすことはできます。とはいえ実際に処置が必要なケースは限られ、手技の出番は少ないでしょう。
デイサービスにおける看護師の1日のスケジュール例
デイサービスで働く看護師は、どのような1日を過ごすのでしょうか。スケジュールについてみていきましょう。
8:50 | 出勤 |
9:00 | 業務開始 当日の利用者の情報を確認(個人情報、既往・持病、注意が必要な点など) |
10:00 | バイタルチェックと体調のヒアリング、入浴の可否判断、入浴前後の処置 |
12:00 | 食事の進み具合の確認、配薬 |
12:45~13:45 | 休憩(食事介助や下膳など、介護職の業務が落ちついたころ) |
13:45~ | 業務再開 午後に入浴する人のバイタル測定と入浴可否判断、入浴前後の処置 |
14:00 | 趣味活動やレクリエーションの見守り・サポート |
15:00 | おやつの時間帯の見守り |
15:30 | トイレ誘導・オムツ交換 |
16:15 | 送迎時の介助、見送り |
16:30 | 看護記録・翌日利用者の情報共有 |
17:00 | 退勤 |
デイサービスにおける看護師の給与相場
デイサービスで働く看護師の給与はいくらぐらいなのでしょうか。ここでは、年収と時給に分けて詳しくみていきましょう。
年収相場:250万~350万円
デイサービスで働く看護師の平均年収は250~350万円で、病院勤務の看護師の給与を大きく下回ります。理由は主に2つあります。
1つめはデイサービス勤務の看護師には早番・遅番勤務や夜勤がなく、残業もほとんどないこと、2つめは医療行為を提供しないためです。
ただ、東京都のデイサービスで働く看護師のなかには、年収400万円を超える人もおり、デイサービス勤務の給与が一概に低いとは言い切れないようです。就業する地域や事業所によって、給与額に差が出ることを覚えておきましょう。
時給相場:1,300~1,800円(首都圏)
首都圏のデイサービスで働く看護師の時給相場は1,300~1,800円です。病院勤務の看護師の時給相場が1,700~2,200円、訪問看護師の時給相場が1,800~2,500円であることと比べると、大きく下回ります。医療行為がないこと、夜勤や残業がほとんどないことが主な理由です。
ただし就業する地域や事業所によっても、時給は異なります。給与条件のよい職場を探している人は、十分な下調べを行うとよいでしょう。
デイサービスで働くメリットとデメリット
看護師がデイサービスで働くことには、メリットとデメリットがあります。具体的にみていきましょう。
メリット1.規則的な勤務体系
デイサービス勤務は、勤務体系が規則的というメリットがあります。利用者さんは日中の決まった時間にサービスを利用するため、看護師の勤務時間も固定される傾向にあります。
またサービス終了後、介護職は送迎介助や運転業務を行いますが、看護師の役割はお見送りまでというところが大半です。記録や情報共有を含めても、定時であがれます。
既婚や子育て中の人のなかには、夜勤や不規則な勤務が多い看護師として働くことをあきらめる人もいるでしょう。デイサービスならプライベートと両立しながら働けます。
メリット2.医療ニーズが低く、精神的負担が少ない
デイサービスで働く看護師は、病院で働く看護師にくらべ、プレッシャーが少ない傾向にあります。病院勤務の看護師は、インシデント・アクシデントや患者さんの急変リスクなど、さまざまな精神的負担を抱えているものです。
デイサービスは医療現場ではなく、介護施設です。利用者さんの健康状態も安定しており、必要な医療処置の範囲も限られます。医療機関で働いているときとくらべストレスが少なく、利用者さんとのコミュニケーションを楽しみながら働くことができます。
デメリット1.給料が低め
看護師がデイサービスで働くことには、デメリットもあります。
なかでも、大きなデメリットといえるのは、給与水準が低いことです。デイサービスの給与の低さは、日勤のみのシフトで夜勤がないこと、残業がほとんどないこと、医療行為や急変リスクがほとんどないことに起因しています。
デメリット2.看護師としてのスキルを活かしづらい
デイサービスの利用者の多くは持病があり、服薬をしています。またささいなことをきっかけに大事に至るリスクもあります。医療的ケアが必要な利用者さんもおり、これまで看護師として培った知識やスキルを活かせる場面は多く存在します。
とはいえ医療機関でない分、手技の出番は少なく、病棟看護師としてバリバリ働いてきた人にとっては、物足りなさを感じるかもしれません。
また看護師としての知識やスキルを磨くことも、デイサービスではむずかしいといえます。
デイサービスに向いている看護師の特徴
デイサービスで看護師として働くには、どのような適性が求められるのでしょうか。具体的にみていきましょう。
高齢者と関わることが好きな人
高齢者と関わるのが好き、または得意な看護師は、デイサービス勤務に向いています。デイサービスのケア対象者は高齢者のみで、健康状態の安定している人たちです。
医療ケアの必要性が低い分、じっくりと利用者さんと関われるでしょう。
ワークライフバランスを大切にしたい人
デイサービスで働く看護師は、仕事とプライベートの時間を両立させやすい特徴があります。デイサービスは、日勤帯のみのシフトで残業や夜勤が原則ありません。そのためとくに既婚者や子育て中の看護師のあいだで人気の職場です。
一部、土日休みや365日営業のところはあるものの、デイサービスの多くは日曜日を定休にしています。毎週末を休日に当てられるので、家族と過ごす時間を充実させやすいでしょう。
体を動かすことが苦ではない人
デイサービスで働くにあたって、体力に自信があると心強いものです。基本的にデイサービスでは、利用者さんの日常生活の介助は介護職が行います。しかし人員が足りないときに、看護師がトイレ誘導やオムツ交換、食事介助などのフォローを行うことがあります。場合によっては入浴介助をすることもあるでしょう。
そのため、体力や足腰に自信がある人、体を動かすのが苦でない人に向いています。
ブランクがあり手技に不安を感じている人
ブランクがある看護師にとっても、デイサービスは働きやすい職場です。デイサービスで求められる看護業務は、バイタルチェックや服薬管理など、基礎的な看護技術であることがほとんどです。
医療処置が必要な利用者さんもいるものの、処置の内容が限られているため、学び直しが大変ということはありません。結婚や子育て等により、看護業務と少し離れていたものの、再び看護師として働きたい人にもおすすめです。
デイサービスへの転職前に確認すべきポイント
看護師がデイサービスへの転職を検討する際は、次のことを確認しましょう。
施設の特色と看護体制
デイサービスは施設によって個性があり、趣味活動やレクリエーションをメインに行っているところもあれば、理学療法士による機能訓練に力を入れているところもあります。
前者であれば、日常生活の援助に加え、利用者さんとのコミュニケーションが重要になり、後者であれば、機能訓練を円滑に行うためのサポートや健康チェックに力を入れる必要があります。
また看護師の人数、1日あたりの人員体制も確認しておくとよいでしょう。
業務範囲と待遇
デイサービスを働くにあたっては、看護師の業務範囲と待遇も必ず確認しましょう。看護師の業務範囲や待遇は、就業する施設によって異なります。看護師には利用者の健康管理全般を任せる施設、介護業務や機能訓練指導員業務を兼務させる施設、介護職同様、送迎業務を任せる施設もあります。
施設での看護師の仕事内容と役割を把握していないと、「看護師なのに専門外の仕事が多い」といった入職後のミスマッチにつながります。自分に合った入職先を探すためにも、看護師の業務範囲や待遇を把握しましょう。
まとめ
デイサービスは介護保険サービスのひとつで、自宅で生活する高齢者に日々の楽しみや生きがい再発見、仲間づくり、社会参加の機会を提供することを目的としています。見守り支援が必要な人だけでなく、医療処置を受けている人もおり、医療現場で培った知識や経験を活かすことができます。
ただデイサービスに求められる医療の知識やスキルは限定的で、給与も低水準です。そのため、医療現場で精力的に働いてきた人には、看護師としての充足感が得られにくい側面があります。
一方で、デイサービスは仕事が定時で終わり、規則的な生活を送りやすい特徴があります。また、利用者の状態が落ち着いていることから、医療機関勤務と比べると大きなプレッシャーを感じにくいでしょう。
ワークライフバランスを重視したい看護師、高齢者とじっくり関わりたい看護師に適した職場です。
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参考:
日本における「デイサービス」と「デイケア」の研究動向、通所介護における医療依存度の高い利用者の支援に対する看護職の認識