看護師は一般的に「収入のよい職業である」というイメージをもたれやすいようです。しかし現場で働く看護師の多くは、「重労働に対し、給与が見合っていない」と感じていることでしょう。
看護師の仕事は夜勤があったり、患者の命に関わる重大な業務をこなしたりと体力的にも精神的にも厳しいものです。その割に収入が少ないと感じるのは無理もありません。
この記事では、「給与が安い」と感じる看護師が多い理由や年収アップのコツ、看護職の将来性について解説します。
看護師の給料が安いと感じる原因・理由とは?
看護師として働くなかで、「業務内容に給与が見合っていない」と感じている人は多いようです。その原因や理由は職場によりさまざまですが、ここでは、主な理由を6つ紹介します。
1:夜勤や重労働による身体的な負荷が大きい
看護師の業務は重労働で、身体的な負担が非常に大きいものです。
病棟内を歩き回り、患者の検温や処置を行うといった立ち仕事がメインとなるうえ、体位変換や移乗介助などの重労働も担います。体力的につらいと感じている看護師も多いことでしょう。
さらに、2交代制の職場で夜勤をする場合、16時間以上連続して勤務することになります。仮眠時間は設けられているものの、忙しい日や急変のある日は休憩が取れないこともあるでしょう。仕事が終わらなければ、夜勤後も残業をすることになります。
激務で身体的な負荷が大きい割に、給与が低いと感じる看護師は多いものです。
2:責任が重く、精神的な負荷が大きい
患者の命を預かる看護師は、重大な責任を負います。日々の業務では、少しのミスも許されず、緊張感のあるなかで仕事をこなさなければなりません。
また、疾患や怪我と向き合う患者やその家族への対応、検査や処置の時間に追われるプレッシャー、職場での人間関係など、精神的なストレスを感じる場面も多々あります。
とくに夜勤帯では、限られたスタッフで多くの患者さんの容態を見守らなければいけないこともあり、緊張感はさらに高まります。緊急時の決断を迫られることもあり、その重圧は想像以上といえるでしょう。
このような責任の重さと精神的な負担に対して、給与が十分でないと感じる看護師は多いのです。
3:拘束時間が長い
看護師の仕事は、本来の勤務時間を大幅に上回ることが多いのが現状です。
日勤帯は基本的に8時間労働ですが、始業とともに患者のケアや検温を始められるように、多くの看護師は勤務時間前から情報収集や薬剤の準備を行っています。業務開始から1時間以上早く出勤して準備を始める看護師も少なくありません。
勤務時間中は患者の対応や次のシフト勤務者への申し送りを優先することになるため、カルテや書類などの記録作業が後回しになり、日常的に残業をすることになります。急変や緊急入院の対応が重なれば、さらに拘束時間は長くなるでしょう。
また2交代制の職場の場合、夜勤の拘束時間は16時間を超えます。夜勤でも日勤と同様に、早めの出勤や残業が必要となるため、実質的な拘束時間はさらに長くなってしまうのです。
このような長時間の拘束に対し、給与が十分に見合っていないと感じるのは無理もないでしょう。
4:休日や業務時間外の勉強が必要
医療の進歩に伴い、看護師には常に新しい知識やスキルの習得が求められます。とくに新人看護師や新しい配置に異動したばかりの看護師は、休日や業務時間外に多くの学習時間を確保しなければなりません。
また大規模な病院では、院内で勉強会や研修が頻繁に開催されます。シフト制勤務の特性上、勉強会に出席するために休日に職場に出向かなければならないことも少なくありません。
勤務終了後に研修に参加することも多く、業務時間外の学習負担が大きいと感じる人も多いことでしょう。
勉強会や研修への参加は、知識の向上やスキルアップにつながり、キャリア形成においては非常に重要です。しかし、休日返上での参加が頻繁になると、身体的・精神的な負荷が重なり、学習意欲が削がれるうえ、サービス残業をさせられていると感じる看護師もいます。
5:残業代を正当に受け取りにくい・請求しにくい
医療の現場では、残業をしなければならないケースはよくあります。残業代を受け取ることは労働者の権利ですが、「実際の残業時間に見合った残業代を受け取れていない」と感じる看護師も少なくありません。
たとえば、業務開始前の情報収集や点滴準備などの“前残業”に対しては、給与が支払われないケースがほとんどでしょう。職場によっては、ミーティングの時間調整や業務の効率化により、前残業を減らす努力を行っているところもあります。
しかし、それでは業務が回らず、前残業が減らせない忙しい職場があることも事実です。
「残業を減らすため、未完了の業務は次の勤務者に引き継ぐように」という指示がある職場も増えています。とはいえ実際には、次の勤務者に負担がかからないよう依頼はせず、自らサービス残業をしてしまう看護師は多いようです。
6:昇給率が低い
看護師は、経験年数に応じた昇給率が低い傾向にあります。
日本看護協会の「2023年病院看護実態調査報告書」によると、新卒看護師の初任給(平均基本給与額)は以下のとおりです。
● 大卒:210,963円
一方、勤続10年、非管理職の平均基本給与額は247,629円でした。このことから、10年間勤務を続けることで初任給から3〜4万円ほど昇給していることがわかります。
新卒看護師と勤続10年のキャリアをもつ看護師とでは、こなせる業務の質や量が大きく変わってきます。さらに、経験の多い看護師は病棟のリーダー的役割や各種委員会の運営、新人教育など、より広範な責任を担うことになります。
実際に担う仕事内容や責任の大きさに対し、昇給率や昇給額が見合っていないと感じることは、ごく自然なことだといえるでしょう。
看護師の昇給率が低い背景には、医療機関特有の経営構造も大きく関係しています。医療機関の収益は、主に診療報酬で成り立っており、看護師を含むスタッフの人件費もここから捻出されています。
また、医療機関における売り上げは医師による医療行為によってもたらされます。看護師のスキルが向上しても、それが直接的な収入アップにつながりにくい仕組みとなっているのです。
看護師の平均給料と年収アップのコツ
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は508万円です。月の手取り額は25万円〜28万円程度です。
看護師が年収アップを目指すためには、大きく分けて以下の3つの対策が挙げられます。
● 資格を取得する
● 管理職を目指す
● 転職する
認定看護師や糖尿病療養指導士などの資格を取得することで、給料に資格手当がつく職場もあります。極めたい領域や興味のある分野がある人は、チャレンジしてみるとよいでしょう。
また師長や主任などの管理職・管理職候補を目指せば、収入アップが見込めます。
資格取得や昇給がむずかしいと感じる場合には、転職も選択肢のひとつです。基本給が高い職場や夜勤手当の高い職場に転職すれば、年収が上がります。
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参照元:賃金構造基本統計調査 / 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
看護師の年収アップを目的とした転職で失敗しないためには?
給与アップのために転職を考える際には、慎重な準備が必要です。
給与だけで転職先を決めてしまうと、労働環境が悪かったり人間関係がよくなかったりと、その職場で長く続けられなくなる可能性もあります。労働環境や将来性なども含めて総合的に検討しましょう。
転職を成功させるためにも、職場の情報収集の際には、以下のポイントを押さえておきましょう。
● 労働時間や夜勤回数
● 職場の雰囲気や人間関係
● キャリアアップの仕組み
● 福利厚生
求人情報に掲載されている情報だけでは不十分な場合には、自身で職場を見学に行ったり、転職サイトを利用して口コミを調べたりすることも大切です。
看護師の仕事の将来性
看護師は、これからの日本においてさらに重要性が高まっていく仕事です。
高齢化社会が加速するなか、医療や介護のニーズは拡大しています。看護師の需要は今後も必然的に増加するでしょう。
また、看護師が活躍できるフィールドも広がってきています。以下のように、病院勤務以外にも看護師の活躍の場は多岐にわたります。
● 訪問看護ステーション
● 企業の医務室
● 保育施設
● 製薬会社 など
医療技術は日々進歩しています。それにより、看護師の専門性もさらに求められるようになっていくでしょう。
まとめ
この記事では、給与が安いと感じる看護師が多い理由や年収アップのコツ、看護職の将来性について解説しました。
看護師として働くなかで夜勤や重労働の負担、長時間の拘束、精神的ストレスなど、厳しい労働環境に対して給与が見合っていないと感じる人は多いことでしょう。しかし、高齢化社会の進展や医療ニーズの多様化により、看護師のニーズは今後も確実に高まっていきます。
大切なのは、給与だけでなく、労働環境や将来性、やりがいなども含めて総合的に判断し、自分らしいキャリアプランを描くことです。計画的にスキルアップを図りながら、自分に合った働き方を見つけていきましょう。
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