看護観は、自分自身の看護師としての成長や就職活動に必要不可欠なものです。働くうえでしっかりした看護観を持っていれば、実際の仕事にも反映させられます。
しかし「看護観ってどういうもの?」「看護観はなぜ必要?」「自分の看護観が見つからない」と考える人は多いのではないでしょうか。
この記事では、看護観とはどういったものなのか、看護観が必要な理由や考え方を解説します。履歴書や面接で伝える場合の看護観の作り方や注意点も解説するので、参考にしてください。
看護観とは何か?
そもそも看護観とはどういったものなのか、解説します。
看護観=理想の看護師像
看護観とは自分にとっての理想の看護師像を表したものです。「どのような看護師になりたいか」「どのような看護をしたいか」とも言い換えることができます。
看護観は、自分のこれまでの経験や考えによって作られていきます。そのため、実習や現場での経験を経て変わっていくことも少なくありません。
看護観に正解はない
看護観に正しい、間違っている、といった指標はありません。看護観は、その人の経験や人生観などから作られるため、他人と自分の看護観は異なって当然です。
さまざまな患者さんや医療従事者などと関わり、看護師としての経験を積んでいくなかで、看護観は深まっていきます。
看護観が必要な理由
看護師として働く上で、看護観は自分自身の目標になります。仕事が忙しい時でも看護観をしっかり持っていれば、患者さんに対して一貫性のある看護を提供することができるでしょう。
また、看護観は自分の目標となるだけでなく、就職・転職先を探すうえでの指針になります。履歴書に看護観を記載すれば、看護師としてどのような考えを持ちながら仕事をしているのか、採用担当者にアピールできます。
面接や履歴書など、就職活動時に看護観をしっかり伝えられるよう、日頃から考えておくことが大切です。
看護観の考え方
自分なりの看護観を持つためには、以下の5つのポイントを押さえるとよいでしょう。
● 自分がどう考えるかを基準にする
● 具体的な内容にする
● 患者さん目線を大切にする
● 先輩看護師の考えや経験を参考にする
● 他人の看護観を真似しない
それぞれ解説します。
自分がどう考えるのかを基準にする
看護観は、主観的なものです。あくまでも自分が目指したい理想や目標であり、他の人が考える看護師像と違っても問題ありません。
むしろ、当たり障りのない看護観は「しっかり考えていないのでは?」と判断され、就職活動ではマイナスになる場合があります。「自分はどういった看護をしたいのか」自信を持って、自分らしい看護観を描くことが大切です。
具体的な内容にする
看護観は、具体的な内容にする必要があります。看護観に正解はないものの「誰にでも優しい看護師」のような漠然とした内容では目標になりにくく、就職活動でも「看護の仕事を深く掘り下げて考えていないのでは?」と判断されてしまいます。
理想とする看護を実現するために、どのような対応が必要かなど、具体的な内容をふまえた看護観を考えるようにしましょう。
患者さん目線を大切にする
看護観を考える際、患者さんが求める看護をどうしたら提供できるかを大切にしましょう。
そもそも看護は、患者さんを支援するために行います。患者さんに必要とされない、かえって迷惑だと思われるような看護では意味がありません。
例えば「患者さんとの会話を大切にする」という看護観は「患者さんの気持ちを引き出すために会話を大切にする」と、患者さん主体の言葉に言い換えられます。会話をするよりもゆっくり休養したい、一人で静かに過ごすのが好き、といった患者は少なくありません。
明確な看護観が思い浮かばないときは、自分が患者になったときにどのような看護をしてほしいかを考えるとよいでしょう。
先輩看護師の考えや経験を参考にする
先輩看護師の考えや経験を聞き、そのなかから自分が目指す看護観を考えるのも有効です。
先輩看護師は、多くの患者さんや家族に接し、困難なケースにも多く直面しています。看護学生や新人看護師と比べて経験値が豊富なため、看護観の変化にも理解があるでしょう。
特に、病気やケガなどで、自身が「患者の立場」になったり、身内の病気や不幸などで「家族の立場」になったりした経験のある先輩看護師は、さらに深い看護観を持っているかもしれません。
経験値が少なく、看護観が思い浮かばない場合は、先輩看護師のアドバイスを参考にするとよいでしょう。
他人の看護観を真似しない
看護観を考える際、他人の看護観を真似しないようにしましょう。一人ひとり経験してきたことや取り巻く環境などは異なります。そのため、他人と同じ看護観を持つとは考えにくいものです。
他人の看護観を真似して志望先に就職できたとしても、のちのち自分の価値観と職場の雰囲気や方針が合わず、結果として働きにくさを感じる場合もあるでしょう。
看護観が伝わる文章の作り方
履歴書や面接でしっかり伝わる看護観を作るには、以下4つのポイントを押さえることが大切です。
● 読みやすく伝わりやすい構成にする
● 心に残る経験やエピソードを書き出す
● 志望先の理念に合わせる
● 看護観と理由を一貫させる
それぞれ解説します。
読みやすく伝わりやすい構成にする
看護観を伝えるためには、相手にとって読みやすく、かつ伝わりやすい構成にする必要があります。
文章を組み立てる際、PREP法を活用すると自分の主張を明確に伝えやすくなります。PREP法とは、以下の順番で情報を伝える文章構成のことです。
1. P:結論(Point)
2. R:理由(Reason)
3. E:具体例・具体的なエピソード)(Example)
4. P:結論(Point)
最初に結論があると、その後に続く文章を理解しやすくなり、誰でも読みやすい文章に仕上がります。結論を述べたあと、その理由と具体的な経験やエピソードを伝えれば、相手にイメージしてもらいやすくなるでしょう。
PREP法は、論理的な文章を作るのに有効です。
心に残る経験やエピソードを書き出す
文章を作る際、これまでの看護経験で心に残っているものをエピソードとして書き出してみましょう。具体的なエピソードには、なぜその看護観を持つに至ったのか、理由を補完する役割があり、文章に説得力が増します。
これまでの経験やエピソードを思い出し、「なぜそれが印象に残ったのか」「なぜそのような行動をしたのか」「なぜそう感じたのか」など、自分に問いかけてみましょう。そうすることで、自分の中の看護観が明確になってきます。
心に残る経験やエピソードは、看護観を考える最初の一歩になります。思いつく限りたくさん書き出すことをおすすめします。
志望先の理念に合わせる
就職活動のために看護観を伝える文章を作る際、志望先の理念に合わせて表現を工夫しましょう。
もちろん、看護観そのものをすべて変える必要はありません。しかし、志望先の理念とかけ離れた看護観では、採用につながらない可能性があります。
看護観は、その人が看護師として取り組んできたことやありたい姿を表します。ある程度志望先の理念と共通するような文章を考えると良いでしょう。
看護観と理由を一貫させる
看護観を伝える文章を作る際、看護観と理由、具体的なエピソードが一貫しているかどうか、確認しましょう。
最初に述べた結論と、理由やエピソードの内容がバラバラでは、どうしてその看護観に至ったのか分からなくなってしまいます。その結果、相手に看護観が伝わりにくくなります。
友人や家族など自分以外の人に見てもらうのもおすすめです。一貫性があるかどうか、客観的な視点から判断してもらえるからです。
面接や履歴書などで使える看護観の例文
就職活動の際、面接や履歴書などで使える看護観の例文を、以下3つのパターン別に紹介します。
● 新卒で就職活動をする場合
● 転職する場合
● 今とは違う種類の職場へ転職する場合
それぞれ参考にしてみてください。
新卒で就職活動をする場合
新卒で就職活動をする場合の例文は、以下の通りです。
例えば、採血をする際、前もって「少し痛いですよ」と声をかけられると「心構えができて安心できる」という方もいれば「痛いと言われると緊張する」という方もいらっしゃるでしょう。このように、治療や看護に対する考えは千差万別なため、常に患者さまの個別性を見極めつつ、安心感を持ってもらえる対応をすることが大切だと考えています。
転職する場合
転職する場合の例文は、以下の通りです。
現在、整形外科で骨折した患者さまや、手術を受けた患者さまの看護に携わっています。例えば食事の際、食事を配るだけでなく、食べやすくするために配慮できることはないか、ベッド上で動けない患者さまにとって何が必要なのか、何を求めているのか、病態に合わせて考えています。「看護師さん忙しそうだから」と遠慮してナースコールを押さない患者さまも少なくありません。患者さまの性格や考え方などを深く観察し、満足していただける看護を提供するよう心がけています。
病院以外の職場へ転職する場合
現在働いている人が、訪問看護ステーションや老人ホームなど病院以外の職場へ転職するケースもあるでしょう。以下、訪問看護ステーションに転職する場合の例文を紹介します。
これまで、治療が中心の入院生活で我慢を強いられ、ストレスを抱える患者さまの姿をたくさん見てきました。住み慣れた自宅に帰りたい、というご希望に添えず、そのまま最期を迎えられる患者さまもいらっしゃいます。
そのような経験を繰り返す中で、患者さまが悔いのない人生を送れるよう、在宅での療養生活をサポートできる看護師になりたいと考えるようになりました。
看護観が伝わる文章を作るポイント
看護観が上手に伝わる文章を作るときの注意点は、主に以下の3つです。
● 短くまとめた文章も作る
● 1つの目標に絞る
● 抽象的な結論は避ける
それぞれ見ていきましょう。
短くまとめた文章も作る
面接では、時間をかけて看護観を伝えられないため、履歴書に記載したものを短くまとめた文章も作るとよいでしょう。
ただし、言葉を削っていくと、主語や目的が伝わりづらくなります。たとえば、看護観が「支える」だとしても、何を支えるのか分かりません。履歴書に文字数制限がある場合や、面接の際に伝える文章では、曖昧な言葉を具体的にし、伝えたい内容を明確にするようにしましょう。
1つの目標に絞る
看護観を伝える文章では、目標を1つに絞るようにしましょう。
自分が目標とする看護師像や、理想が多いのは悪いことではありません。ただし、すべて文章に書き出そうとすると、何を大切にしているのか伝わりにくくなります。
あれもこれもと主張をプラスせず、一番伝えたい目標だけを記載するようにするとよいでしょう。
抽象的な結論は避ける
文章を作る際、抽象的な結論は避けるようにしましょう。
例えば「目標を達成するために頑張りたい」といった抽象的な結論では、看護業務にどのように取り組みたいのか分かりません。
「患者さまが安心できるまで何度も説明をする」など、目標を達成するための取り組みは、具体的なエピソードを交えて表現すると相手に伝わりやすくなるでしょう。
まとめ
看護観は、自分にとって理想とする看護師像を表します。「どのような看護師になりたいか」「どのような看護をしたいか」といった軸を持つことで、自分自身の成長だけでなく、就職活動にも役立ちます。
看護観は、もともとの人生観や経験、患者・家族・医療スタッフなどとの関わりによって次第に変化していくものです。看護観を考える際、経験値が浅い場合は、先輩看護師の考えや経験を参考にすると、自分の看護観が見出しやすくなります。
就職の際は、志望先の理念に合わせて表現を工夫することも頭に入れておくとよいでしょう。
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