急性期病院とは?役割・種類や他の病院との違い、仕事内容、メリット・デメリットを紹介

急性期病院とは?役割・種類や他の病院との違い、仕事内容、メリット・デメリットを紹介

重症で状態が不安定な患者さんの入院治療を行う急性期病院。看護師のなかには、急性期病院で働きたいと考えている人、急性期病院の特徴や身に付けられるスキルについて詳しく知りたいという人も多いのではないでしょうか。

この記事では、急性期病院の役割と他の病院との違い、看護師の仕事内容について解説します。

目次

急性期病院とは?役割と主な患者層

急性期病院とは、急性疾患を抱える患者さんや重症患者さんに対して24時間体制で治療の提供を行う病院のことです。

そもそも「急性期」とは、病気やケガが急激に現れ、患者さんの病状が不安定な状態のことをいいます。急性期病院では、急変リスクが高い重症患者さんに対して、必要な検査や手術、全身管理が昼夜を問わず行える環境が整備されています。

急性期病院の入院期間の目安

急性期病院における平均的な滞在日数は、約10日です。日本では医療費の抑制や必要なベッド数の確保のために、入院期間の短縮化が進められています。

2024年度診療報酬改正案では、急性期病院の平均在院日数の基準が見直され、「18日以内」から「16日以内」となりました。患者さんの病状や経過は個人差があるものの、診療報酬上、入院日数が14日を超えると、点数が下がる仕組みです。そのため急性期病院では、患者が入院した段階から早期転院や早期退院を見据えて計画や話し合いを行うことになります。

急性期医療体制の種類

急性期の患者さんを受け入れる救急医療の体制は、患者さんの重症度に応じて分かれています。

一次救急とは?

一次救急とは初期医療のことで、医療機関に自分で来院でき、入院の必要がない軽症の患者さんの対応を行います。一次救急を担う医療機関は、次のとおりです。

かかりつけ医、近くのクリニック(診療所)
自治体が運営している休日・夜間応急診療所

二次救急とは?

入院治療が必要な重症患者さんを、24時間365日体制で受け入れる救急体制です。二次救急を担う医療機関は、次のとおりです。

都道府県知事が認定した救急指定病院
初期救急からの搬送患者の対応日が決められている病院(二次輪番病院)
市民病院
急性期の脳心血管疾患の専門医療を提供する病院・クリニック

三次救急とは?

二次救急の医療機関では対応できない、高度な医療処置が必要な重篤患者さんの対応を行う救急体制です。三次救急を担う医療機関は、次のとおりです。

救命救急センター、高度救命救急センター
大学病院、県立病院、赤十字病院など

急性期病院と他の病院との違いについて

急性期病院と他の病院との違いについて

病院の機能は、治療対象となる患者さんごとに分かれています。ここでは急性期病院と他の病院の違いについてみていきましょう。

急性期病院と高度急性期病院の違い

高度急性期病院とは、急な病気やケガ、持病の急激な悪化など、緊急に治療が必要な重症患者さんに対して、高度で専門的な医療を提供する病院のことです。高度急性期病院は、急性期病院よりも一日あたりの医療介入が多く、以下の部署を有しています。

特定機能病院における高度な医療を提供する病棟
救命救急病棟
集中治療室(ICU)
ハイケアユニット(HCU)
新生児集中治療室(NICU)
新生児治療回復室(GCU)
小児集中治療室(PICU)
母体胎児集中治療室(MFICU)

急性期病院と慢性期病院の違い

急性期病院と慢性期病院の違いは、受け入れる患者さんの病態や入院期間、医療体制にあります。

急性期病院では、病態が不安定な患者さんに対して、ある程度安定した状態になるまで治療を行います。入院期間は比較的短めですが、高度な医療を提供するために、看護体制は7対1で、入院患者7人につき看護師1人と手厚い配置がなされます。

一方、慢性期病院では、ある程度容体が安定している患者さんに対して、一定期間、継続して医療の提供や療養支援、リハビリテーションを行います。看護体制は20対1で、入院患者さん20人につき看護師1人が配置されます。

急性期病院で働く看護師の役割・仕事内容とは?

急性期病院には、さまざまな部署がありますが、入院患者さんのうち、3割以上は重症度や看護必要度が高い人たちです。看護師は患者さんが質の高い医療を受けられるよう、正しい医療知識に基づいた看護ケアを行う必要があります。

とくに、救急科や集中治療室(ICU)のような集中医療の現場では、看護師は、24時間体制で重症患者さんの全身管理や急変対応を行わなければなりません。患者さんの兆候の変化から異常の早期発見をし、医師に報告する、急変時に医師の処置のサポートをするなど、看護師には臨機応変な対応力が求められます。

また近年、急性期医療現場では治療を受ける患者さんの高齢化が進んでおり、認知症を抱える人や転倒・転落リスクの高い人も増えています。
急性期病院では、患者さんが必要な入院治療を受けられるように努めるとともに、安全に療養生活を過ごすための配慮も必要です。

急性期病院における看護師の主な働き方

急性期病院では、24時間365日体制で医療を提供するため、看護師はシフト制で働きます。看護師のシフト制には以下の2つがあります。

2交代制:日勤(実働8時間)、夜勤(実働16時間)
3交代制:日勤(実働8時間)、準夜勤(実働8時間)、深夜勤(実働8時間)

急性期病院でも必要な休日は取れるものの、シフト制勤務は生活リズムが一定しません。とくに急性期医療に携わっている看護師は、疲労やプレッシャー、ストレスが蓄積しやすくなります。普段から睡眠時間の確保に努めたり、気分転換になる活動をしたりといった工夫をすることが大切です。

急性期病院で働く上でのやりがい・メリットとは?

看護師が急性期病院で働くことには、さまざまなメリットがあります。具体的な内容は次のとおりです。

1:看護師としての成長につながるスキルや医療知識が身に付く

看護師が急性期病院で働くメリットのひとつに、幅広い看護技術が身に付けられることが挙げられます。国家資格の取得後に習得できる看護技術は、所属部署の影響を受けやすくなります。一般的に、高度な医療を提供する急性期病院では、身に付けられる看護技術の種類が多いものです。

急性期病院で働く看護師は、一般病棟でも人工呼吸器や挿管チューブを使った患者さん、術後の患者さんのケアなど、高度な医療に触れる機会があります。学ぶべき医療処置や看護ケアは多いですが、経験をしっかり積めば、看護師としてどこでも通用できるようになるでしょう。

2:認定看護師や専門看護師を目指すための足掛かりにできる

急性期病院に勤務するなかで、「看護師としてさらに専門知識を深めたい」と考える人も少なくありません。急性期病院でも、急性期からターミナル期まで幅広く受け入れを行っている医療機関は多く、経験できる症例も豊富です。

そのため、1つの部署でも、認定看護師や専門看護師に係る複数の分野に触れることができます。例えば、急性期病院の消化器外科病棟では、一般的に手術を受ける患者さん以外にも、化学療法や放射線療法を受ける患者さん、ターミナル期の患者さんも受け入れるため、認定看護師や専門看護師に係る以下の分野の看護ケアに携われます。

認定看護師手術看護,皮膚・排泄ケア,感染管理,がん薬物療法看護,がん放射線療法看護,緩和ケア,認知症看護
専門看護師がん看護,老人看護,感染症看護,放射線看護

日々の看護業務にあたるなかで、自分の興味・関心のある分野をみつけるきっかけができれば、看護師としてのステップアップの足掛かりになるでしょう。

3:患者の回復を目に見えて実感できる

急性期病院のメリットは、患者さんが回復し、退院する姿をみられることです。急性期は慢性期と比べると、患者さんの入院期間が短く、経過が早いことから、自分たちが立案・実施した看護計画の成果を感じやすいのが特徴です。

とくに看護師の多くは、患者さんの笑顔や感謝の言葉に対して、働きがいを強く感じるものです。患者さんの回復過程において、前向きなフィードバックが得られやすく、仕事へのモチベーションを維持できるでしょう。

急性期病院で働く上での大変さ・デメリット

看護師が急性期病院で働くことには、デメリットもあります。具体的な内容についてみていきましょう。

1:責任を感じる場面が多く、プレッシャーが大きい

急性期病院は高度な医療を扱うため、患者さんに必要な医療処置や看護ケアもより複雑になります。看護師のミスが患者さんに悪影響を与えることも多く、正確な看護知識やスキルを持つことが求められます。

仕事がない休日も自己学習が必要など、業務へのプレッシャーを感じやすいというデメリットがあります。

2:患者一人ひとりとじっくり向き合う時間が少なく、関係を築きにくい

急性期病院では、患者さんが受ける治療や看護ケアも多く、看護師の業務が複雑になりがちです。勤務時間内に業務を終わらせることを優先すると、患者さんと関わる時間や気持ちの余裕が持てないといったことも起こりえます。

急性期の患者さんは入院期間が短い分、限られた期間のなかでも、相手のニーズを把握し、適切な看護ケアを提供することが求められます。

3:急患の受け入れや急変対応が必要なことがある

急性期病院は、重症で容体が不安定な患者さんに入院治療を行うところです。そのため、時には救急搬送された患者さんの緊急入院や急変患者さんの医療処置などにより、予定外の業務が降りかかることがあります。

勤務帯や看護師の配置状況によっては、退勤時間後も残業をしなければならないこともあるでしょう。仕事後のプライベート時間をしっかり取れないことで、「仕事が忙しい」「休めない」といった不満を抱く人も多いものです。

4:仕事とプライベートの両立がむずかしい

急性期病院における看護師の業務量は複雑で多いものの、休日はしっかり取ることができます。しかし、仕事で幅広い看護知識やスキルが求められるため、新人のうちは休日も自己学習に当てることになるでしょう。

また看護業務による疲労やプレッシャーから、休日に外出する気力がなくなり、家に引きこもってしまう人もいるようです。仕事とプライベートのメリハリが上手くつかず、両立のむずかしさを感じる看護師もいます。

急性期病院で働くのに向いている人の特徴

急性期病院で働くのに向いている人の特徴

急性期病院に適しているのは、向上心があり、行動力のある看護師です。高度な医療が提供される急性期医療の現場では、看護師に求められる知識やスキルのレベルが高くなります。そのため、看護師の経験が浅いうちは、休日に自己学習に励んだり、研修の参加や業務に役立つ資格取得を求められたりすることもあるでしょう。

急性期病院で働く看護師は、患者さんが短期間で快方に向かう姿をみられる一方で、患者さんの容体が急激に変化することも多く、適切な判断力と臨機応変に対応できる能力が欠かせません。

また、救急センターや集中治療室(ICU)のような集中治療を提供する部署では、一定数の患者さんが亡くなるものです。医師や看護師ら医療スタッフが最善を尽くしても、患者さんの死を目の当たりにすることもあります。

急性期病院は、慢性期病院ほどじっくり患者さんと向き合えるわけでないだけに、「看護師として何ができたか」と疑問を持つこともあるでしょう。気持ちの整理がつきにくい環境だからこそ、ネガティブな状況に置かれても、早めに気分を切り替えられる精神的なタフさも必要です。

なお、急性期病院で働く看護師は医療処置や患者さんのケアをはじめ業務量が多いうえ、緊急入院や急変対応により、残業になることもあります。多忙ななかでも正確に業務を遂行できる能力に加え、基礎的な体力も求められます。

急性期病院の看護で役立つ資格について

看護師が急性期病院で働くにあたって役立つ資格は、部署によって異なります。
急変時の対応は、看護師自身がその場に遭遇しないと身に付きにくいものです。そんななか、次に挙げる資格は患者さんの急変時に慌てずに対応するために役立ちます。

BLSプロバイダー:心停止など急変時に必要な一時救命処置に関する知識やスキルを学べる資格
ACLSプロバイダー:心停止など急変時の二次救命処置に関する知識やスキルを学べる資格
PALSプロバイダー:乳児や小児の急変時の二次救命処置に関する知識やスキルが学べる資格
急性期ケア専門士:急性期の看護ケアや急変対応のスペシャリストであることを証明する資格

急性期病院で働く看護師に役立つ資格について、詳しく知りたい人はコチラ

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急性期病院に勤務する看護師の給与目安はいくら?

急性期病院に勤務する看護師の平均的な給与は、月収35.1万円、年収495万円です。実際の給与は、各部署の残業時間や夜勤回数によって異なります。

急性期病院のなかでも集中治療を行う救急科や集中治療室(ICU)で勤務する看護師には、特別業務手当(1~3万円)が支給されることが多く、年収にして10数万円から30数万円ほど高くなります。

回復期・慢性期病院から急性期病院へ転職することは可能?

回復期・慢性期病院から急性期病院へ転職することはできます。ただ、急性期医療の看護経験が全くないと、転職しても新たに学ぶことも多くなるでしょう。患者さんとのコミュニケーションに時間を割きすぎると、必要な業務が終わらなくなるため、上手く時間配分をする工夫も大切です。

回復期や慢性期病院で培った臨床経験は、急性期病院でも役立ちます。たとえば急性期を脱した後の患者さんの療養生活をイメージしやすく、早い段階からリハビリや退院を意識した看護ケアの提供ができるでしょう。

急性期病院に勤務する看護師が目指せるキャリアとは?

急性期病院に勤務する看護師が目指せるキャリアとは?

急性期病院に勤務する看護師のなかには、重症患者さんの看護ケアや急性期医療に興味・関心を持つ人もいるでしょう。急性期看護の知識やスキルを深めたい人は、次のような資格を取得するのもおすすめです。

1:急性・重症患者看護専門看護師

専門看護師の分野のひとつで、同資格は緊急性の高い重症患者さんに対し、集中的な看護ケアの提供や医療職間の調整が行える看護師に与えられます。

専門看護師は専門的な看護ケアを行うだけでなく、倫理問題を含む相談や調整、教育及び研究といった役割も担うため、働く場も多様で、集中治療室(ICU)や救命救急センター、一般病棟や看護管理室、大学や大学院など看護系の教育機関に活躍の場があります。

急性期看護に直接携わるだけでなく、スタッフや学生への教育、医療職間の調整を通し、質の高い看護ケアの提供を目指したいという人におすすめの資格です。

2:クリティカルケア認定看護師

クリティカルケア認定看護師は認定看護師の領域のひとつで、同資格は生命の危機に直面した患者さんに対して、高度な看護ケアを提供できる看護師に与えられます。

集中治療を必要とする現場では、患者さんの生命維持に医師や医療スタッフの全力が注がれます。そんななか、クリティカルケア認定看護師は、患者さんの全身管理や異常の早期発見に加えて、苦痛の緩和や家族の支援など基本的な看護ケアも行います。

クリティカル認定看護師の資格取得後は、ICUや救急センターといった救急医療の現場でスタッフとして働くだけでなく、指導的な立場を任されることが多くなります。副師長や看護師長といった管理職を任される機会も増え、昇進や収入増にもつながるでしょう。

まとめ

急性期病院は、病気やケガにより、生命の危機に瀕した重症患者さんの入院治療を行う医療機関です。急性期医療の現場で働く看護師は、いろいろな医療処置や看護ケアを学ぶことができ、どんな状況でも臨機応変に対応できる力が身に付きます。

また、患者さんが回復していく姿を間近でみられ、看護師としてやりがいを感じやすい一方、急変も起こりやすく、責任とプレッシャーを感じる場面も多くなります。

さまざまな医療処置や看護ケアを学びたい人、つぶしの効く看護師になりたい人は、急性期病院で働くことを検討するとよいでしょう。

参考:
伊勢赤十字病院/救急医療のしくみ
第二次救急医療機関について
急性・重症患者
令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者職種

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