看護職の上位職である助産師。将来、助産師として働きたいと考える人のなかには、年収相場について気になる人もいるでしょう。
この記事では助産師の年収について、さまざまな角度から紐解き、解説していきます。すでに助産師として働いている人も、参考にしてみてください。
助産師の年収・月給・時給はいくら?
助産師の年収・月給・時給は次のとおりです。
年収 | 月給 | 時給 | |
助産師 | 566.9万円 | 39.5万円 | 2,225円 |
参考:「令和5年賃金構造基本統計調査」
令和5年の日本人の平均年収は460万円、うち女性の平均年収は280万円でした。女性の平均年収が低いのは、男性に比べ、家事や育児と両立しながら非常勤で働く人の割合が高いことがあげられます。
助産師は医療系の国家資格のなかでも上位職にあたります。それも一般職と比べ、助産師が高収入である理由のひとつです。
【経験年数別】助産師の年収・月給・時給
助産師の年収は、経験年数が長くなるほど高くなります。経験年数別の収入は以下のとおりです。
経験年数 | 年収 | 月給 | 時給 |
0年 | 388万円 | 29.0万円 | 1,815円 |
1~4年 | 437万円 | 30.0万円 | 1,878円 |
5~9年 | 498万円 | 35.2万円 | 2,201円 |
10~14年 | 501万円 | 35.3万円 | 2,206円 |
15年以上 | 585万円 | 39.0万円 | 2,438円 |
参考:「令和5年賃金構造基本統計調査」
【年齢別】助産師の年収・月給・時給
助産師の年収は、年代によっても異なります。ここからは年代別の年収についてみていきましょう。
年齢 | 年収 | 月給 | 時給 |
全年齢平均 | 566万円 | 39.5万円 | 2,225円 |
20~24歳 | 401万円 | 29.7万円 | 1,680円 |
25~29歳 | 513万円 | 36.0万円 | 1,997円 |
30~34歳 | 517万円 | 37.2万円 | 2,146円 |
35~39歳 | 573万円 | 40.3万円 | 2,236円 |
40~44歳 | 570万円 | 39.6万円 | 2,147円 |
45~49歳 | 612万円 | 43.1万円 | 2,386円 |
50~54歳 | 684万円 | 46.8万円 | 2,684円 |
55~59歳 | 662万円 | 44.2万円 | 2,528円 |
60~64歳 | 604万円 | 40.7万円 | 2,302円 |
65~69歳 | ― | ― | ― |
70歳 | 376万円 | 26.3万円 | 1,576円 |
参考:「令和5年賃金構造基本統計調査」
年齢を重ねるうちに、助産師としての臨床経験も積み重なっていくため、年収は高くなる傾向にあります。助産師として働き続けることで、着実な収入アップが期待できるでしょう。
ただ50代半ば以降になると、少しずつ年収が下がっていきます。
50代以降も昇給はあるものの、加齢による体力の低下や身内の介護などにより、分娩介助や夜勤・オンコール待機の回数を減らす助産師も少なくありません。これらが影響し、収入が低くなっていると考えられます。
【職場の規模別】助産師の年収・月給・時給
助産師の給料は、医療機関の規模によっても異なります。職場の規模別における助産師の給料は、次のとおりです。
職場の規模 | 年収 | 月給 | 時給 |
全体平均 | 566.9万円 | 39.5万円 | 2,215円 |
10~99人 | 580万円 | 41.8万円 | 2,292円 |
100~999人 | 555万円 | 37.8万円 | 2,166円 |
1000人以上 | 557万円 | 37.9万円 | 2,187円 |
参考:「令和5年賃金構造基本統計調査」
助産師の年収は、規模が小さい医療機関の方が高い特徴にあります。
これは産科・産婦人科クリニックで働く助産師の給与が高いというだけでなく、助産院を開業した人の収入が高いことも影響しているといえるでしょう。
また医療機関のなかには、産科のみの病棟がない、または分娩に対応していない施設もあります。助産師の収入源である分娩介助手当の支給機会が減ることで、給与に差が生じている可能性も考えられます。
【地域別】助産師の年収・月給・時給
助産師の給料は、働く地域によっても異なります。都道府県別の助産師の給料は次のとおりです。
都道府県名 | 年収 | 月給 | 時給 |
全国平均 | 555万円 | 38.9万円 | 2,195円 |
北海道 | 692万円 | 47.1万円 | 2,837円 |
青森県 | 702万円 | 51.9万円 | 2,631円 |
岩手県 | 635万円 | 40.9万円 | 2,307円 |
宮城県 | 570万円 | 38.6万円 | 2,143円 |
秋田県 | 583万円 | 38.0万円 | 2,256円 |
山形県 | 421万円 | 29.3万円 | 1,792円 |
福島県 | 662万円 | 40.8万円 | 2,384円 |
茨城県 | 519万円 | 38.2万円 | 2,100円 |
栃木県 | 657万円 | 41.5万円 | 2,106円 |
群馬県 | 519万円 | 35.0万円 | 1,960円 |
埼玉県 | 600万円 | 40.2万円 | 2,158円 |
千葉県 | 638万円 | 44.7万円 | 2,548円 |
東京都 | 615万円 | 43.2万円 | 2,616円 |
神奈川県 | 502万円 | 36.4万円 | 2,261円 |
新潟県 | 529万円 | 35.7万円 | 1,886円 |
富山県 | 520万円 | 36.8万円 | 2,289円 |
石川県 | 612万円 | 39.9万円 | 2,291円 |
福井県 | 484万円 | 33.0万円 | 1,680円 |
山梨県 | 487万円 | 40.6万円 | 2,455円 |
長野県 | 479万円 | 34.6万円 | 1,996円 |
岐阜県 | 605万円 | 40.6万円 | 2,243円 |
静岡県 | 544万円 | 40.8万円 | 2,399円 |
愛知県 | 568万円 | 43.0万円 | 2,287円 |
三重県 | 674万円 | 46.2万円 | 1,927円 |
滋賀県 | 388万円 | 32.3万円 | 2,086円 |
京都府 | 577万円 | 38.2万円 | 2,392円 |
大阪府 | 539万円 | 36.4万円 | 2,240円 |
兵庫県 | 474万円 | 33.0万円 | 1,774円 |
奈良県 | 628万円 | 43.7万円 | 2,444円 |
和歌山県 | 408万円 | 30.2万円 | 1,665円 |
鳥取県 | - | - | - |
島根県 | 529万円 | 35.7万円 | 2,289円 |
岡山県 | 825万円 | 55.0万円 | 3,525円 |
広島県 | 576万円 | 37.7万円 | 2,150円 |
山口県 | 479万円 | 33.5万円 | 2,097円 |
徳島県 | 376万円 | 26.8万円 | 1,669円 |
香川県 | 433万円 | 31.2万円 | 1,611円 |
愛媛県 | 606万円 | 40.6万円 | 2,012円 |
高知県 | 603万円 | 40.2万円 | 2,685円 |
福岡県 | 544万円 | 38.5万円 | 2,177円 |
佐賀県 | 484万円 | 33.3万円 | 1,764円 |
長崎県 | 537万円 | 39.8万円 | 1,813円 |
熊本県 | 482万円 | 31.7万円 | 1,701円 |
大分県 | 541万円 | 35.4万円 | 2,026円 |
宮崎県 | 391万円 | 30.4万円 | 1,727円 |
鹿児島県 | 704万円 | 45.8万円 | 2,171円 |
沖縄県 | 464万円 | 33.3万円 | 1,962円 |
参考:「令和5年賃金構造基本統計調査」
助産師の年収が高い地域には、岡山県・東京都・千葉県・高知県があります。
また、北海道・東北地方、関東地方や関西地方も比較的年収が高いことがわかります。九州地方では年収が低めのところが多く、助産師の平均年収を下回る地域もみられました。
ただ年収が高い地域でも、「月給は少ないけれど、ボーナスは高い」「他の地域と比較すると、残業が多い」といったところもあります。反対に、年収が低めの地域には、毎月の労働時間そのものが少ないところもありました。
助産師の年収・月給・時給に関わる項目
助産師の年収は、基本給や手当によって差が出ます。ここでは助産師の収入について、給与に関する項目ごとに説明していきます。
1:初任給
助産師の初任給は30万前後です。毎月支給される給与には、基本給のほかに、資格手当や地域手当、通勤手当・住宅手当が含まれます。地域手当は地域ごとの物価の違いを是正するために支給される手当で、就労する都道府県によって支給額が異なります。
一般的に、物価の高い都市部は手当額が高い傾向にあります。
通勤手当や住宅手当は、勤務先の福利厚生の一種です。一般的に毎月支払われるため、これら手当の支給の有無や金額により、年収に大きな差が出ます。
高収入を得たい助産師は、福利厚生に関わる支給額が手厚い職場を選ぶのもおすすめです。
なお、助産師にも残業手当が支給されるものの、助産師は残業自体が少ない特徴があります。
2:賞与・ボーナス
多くの医療機関では、助産師に賞与(ボーナス)を支給しています。助産師の賞与額の目安は、病院で基本給の4か月分、クリニックでは2か月分です。
地域によっては、月給は低めでも、ボーナス額が大きく、年収が高くなるところもあります。
3:夜勤や分娩介助など諸手当
助産師にも看護師と同様に、夜勤手当や残業手当が支給されます。勤務先によって差があるものの、助産師は看護師に比べ、残業が少ない傾向があります。
また分娩介助を行う助産師には、分娩介助手当やオンコール手当が支給されます。近年は分娩に対応していない医療機関もあるため、産科勤務でもこれらの手当がつかないこともあるでしょう。
助産師と看護師の年収の違い
一般的に、助産師の年収は、看護師より高いものです。「令和5年賃金構造基本統計調査」をみても、助産師の平均年収が566万円なのに対し、看護師は508万円でした。
経験年数や地域により年収額に変動があるものの、助産師の方が看護師よりも高学歴で、支給される手当も多いことから、月給や賞与額は高くなります。看護職として高収入を得たいのであれば、助産師を目指すのもよいでしょう。
看護師の平均年収、給料の増やし方について、詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。
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助産師の年収が看護師よりも高い理由とは?
助産師の年収が高い理由には、助産師が看護師の上位資格であることがあげられます。助産師資格を取得するには、まず看護師資格を取得する(もしくは取得見込みである)必要があります。
また看護師養成学校が高校、短大および専門学校、大学であるのに対し、助産師養成学校は大学または大学修士課程です。
規模の大きい医療機関の大半は、「国家公務員(医療職)」の俸給表にならって給与を決定・支給しています。看護職の給与体系には、経験年数と学歴が加味されます。看護師よりも高学歴の助産師は、給与水準も高くなるのです。
また助産師は業務のなかで、分娩介助のように、看護師にはできない診療行為も行います。
それらに対し、分娩介助手当やオンコール当番の待機手当・休日出勤手当が支給されます。なお夜勤手当の額も、看護師より2,000円程度高い傾向にあります。
さらに助産師は助産院を開業することもできます。
診療報酬は、医療機関の運営元や個人クリニックの院長が受け取るケースが大半ですが、助産院の開設者である助産師も受け取れます。近年、日本の分娩件数は減少傾向にあるものの、自営業者になることで、高収入を得られる可能性が高まります。
助産師の給料が看護師よりも高い理由について、詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。
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助産師になる方法
看護職を目指している人、すでに看護師として働いている人のなかには、助産師になりたいと考えている人もいるのではないでしょうか。
助産師になるには、看護師資格を保有(または保有見込み)しており、かつ助産師国家資格に合格する必要があります。
受験資格は、看護師になった後に助産師養成所で1~2年間学ぶか、看護系大学で看護師養成カリキュラムと助産師養成カリキュラムを修了することで得られます。
看護職の上位職である助産師は、看護師よりも高収入を得やすいものの、近年、助産師を取り巻く環境は大きく変化しています。
たとえば少子化にともない産科単科の病棟が減少し、産科・婦人科以外にも、小児科や内科、整形外科など他の診療科との混合病棟で働く機会が増加していること、医師不足により分娩を扱わない院が増えていることがあげられます。
そのため助産師として入職しても、看護業務も兼務する必要があるなど、助産業務に専念するのがむずかしいこともあるでしょう。将来、助産師として働き続けたい人は、これらを踏まえ、しっかりとしたキャリアプランを描くことが大切です。
まとめ
助産師は高学歴でさまざまな手当がつくことから、看護職のなかでも収入が高い特徴があります。とはいえ、近年は産科が単科病棟ではなく、混合病棟に含まれるケースも増えており、助産師として就労しても、助産業務のみを行えるとは限りません。
分娩介助に興味・関心を抱いて助産師を目指す人は、収入面に注目するだけでなく、助産師の置かれている現状も考慮したうえで、将来のキャリアプランを描くことが大切です。
すでに看護師として働いている人が助産師になれば、今よりも高い年収を得られる可能性は高まります。また、助産師にも看護の知識やスキルを求められる機会は多く、看護師としての経験を活かすことができるでしょう。
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