企業看護師はどのような看護師?働き方や目指すメリットを解説

医療や介護の現場ではなく、一般企業で働く看護師を「企業看護師(産業看護師)」と呼びます。医療機関や介護福祉施設で働く看護師のなかには、企業への転職に興味を持っている人もいるのではないでしょうか。

この記事では、企業で働く看護師の仕事内容や、企業看護師へ転職することのメリット、目指す際の注意点を紹介します。企業看護師について知りたい人は、最後まで読んでみてください。

企業看護師(産業看護師)とは

企業看護師とは、一般企業や医療機器メーカー、製薬会社で働く看護師のことです。産業看護師とも呼ばれています。まずは、企業看護師の仕事の特徴について紹介します。

企業に勤める看護師

企業看護師は、医療機関や介護福祉施設ではなく企業に勤め、会社員として仕事をします。比較的規模の大きな企業では、看護師が医務室や健康管理室に常駐しています。

企業看護師は、従業員の健康診断の段取りや、検査結果をもとにしたそれぞれへのアドバイス、急な怪我や体調不良の対応などを行います。

社員の健康管理を担う

企業看護師の役割は、従業員の健康管理を行うことです。一人ひとりが健康的に働ける環境を提供することを目的とし、定期健康診断のサポートや心理的ケア、健康相談、健康に関する指導、急な怪我や病気への対応を行います。

2023年4月に厚生労働省により開始された「第14次労働災害防止計画」では、労働者の安全と健康の確保に加え、一人ひとりが潜在能力を十分に発揮できる社会の実現を目指しています。従業員一人ひとりが健康的に生産性を上げるために、企業看護師は重要な役割を担っているのです。

参考:労働災害防止計画について |厚生労働省

高度な医療的ケアは行わない

企業看護師の業務は、医療機関の看護師とは異なり予防医療が中心です。命に関わる、一刻を争うような場面にはまず遭遇しません。

怪我や急病時の応急処置をすることはありますが、緊急性のある高度な医療行為に立ち会うことは少ないため、業務に対するプレッシャーは少ないといえるでしょう。

夜勤や土日出勤がない

企業看護師の勤務体制は、経理や人事、総務など、企業のバックオフィスで働く社員と同様のことが多く、9時~17時といった規則的な勤務で週休2日制が基本です。夜勤や土日出勤は原則ありません。

変則的な勤務となる医療機関や介護福祉施設での仕事と比べ、体力に自信がなくても働きやすいといえます。ワークライフバランスを重視し、看護の資格を生かして働きながら、規則正しい生活を送りたい人にとっては、理想的な仕事といえるでしょう。

企業看護師のそのほかの働き方

ここまで、企業看護師の業務内容として、代表的な「従業員の健康管理」の仕事について解説しました。実際には、健康管理以外の仕事を行う企業看護師も多くいます。

<例>
・臨床開発モニター(CRA)
・治験コーディネーター(CRC)
・フィールドナース
・コールセンター など

それぞれの企業看護師の働き方について、解説します。

臨床開発モニター(CRA)

臨床開発モニター(CRA)は、製薬会社や医薬品開発業務受託機関に勤務し、治験が円滑に実施されるようにサポートする仕事です。症例データの管理や、治験が計画どおりに進行できているかどうかの確認、治験が法律やルールに沿って適切に実施されているかのチェックなど、その仕事内容は多岐にわたります。

直接被験者と関わることはありませんが、医薬品の有効性や安全性を維持するために非常に重要な役割を果たします。臨床開発モニターとして働くには、幅広い専門知識が必要となります。医療の知識を生かしてやりがいのある仕事をしたい方におすすめです。

治験コーディネーター(CRC)

治験コーディネーター(CRC)は、治験の被験者のサポートを行う仕事です。製薬会社側で働く臨床開発モニターとは異なり、治験施設支援機関や医療機関の治験事務局などに所属し、治験がスムーズに進むように被験者側の調整を行います。

具体的な業務内容は、治験情報の管理や資料作成、被験者への説明などです。特に被験者に対しては、治験内容の説明だけでなく、心理的な負担の軽減のために相談相手になることが求められます。コミュニケーションが重要となるため、臨床での看護師経験が生かせる仕事であるといえるでしょう。

フィールドナース

フィールドナースは、医療機器メーカーに勤務し、医療機器の営業や顧客サポートなどを行う仕事です。医療機関へ出向き、現場の医療スタッフに自社製品の特徴やアピールポイントを紹介します。医療機器のデモンストレーションを行ったり、現場のスタッフからの質問に応じたりすることもあるでしょう。

医療や治療への知識だけでなく、扱う医療機器への深い知識が求められるため、入社後には研修やトレーニングを積む必要があります。

コールセンター

医療機器メーカーや製薬会社など、医療に関する製品・サービスを扱う会社では、利用客からの問い合わせに対応するために、コールセンターに看護師を配置していることがあります。テレフォンオペレーターは、基本的にはマニュアルに沿って電話対応を行います。

しかし、自社の製品に対する問い合わせ以外にも、健康や病気、医薬品についてなど、医療に関するさまざまな質問が寄せられます。そういった意味では、医療の知識や臨床経験が直接生かせる仕事です。

コールセンターの求人は、保険会社や医薬品メーカーなど、幅広い企業で募集されています。選択肢の多い職場といえるでしょう。

企業看護師への転職を目指すメリット

医療機関や介護福祉施設で働く看護師のなかで、夜勤や不規則なシフトがつらかったり、人の命を預かるプレッシャーを重く感じていたりする人は、体力的・精神的負担の少ない企業看護師の仕事に魅力を感じることでしょう。

企業看護師への転職をすることで得られるメリットについて、具体的に紹介します。

子育てと両立しやすい

企業看護師の仕事の多くは、バックオフィスで働くスタッフと同様、9時~17時といった規則的な勤務で週休2日制のところが大半です。勤務時間や休日が一定のため生活リズムが整いやすく、家族や友人と過ごす時間もしっかり確保できるでしょう。

子育てをしながら夜勤に入ると、どうしても家族や周囲の人に子どもの世話を任せる必要が生じます。企業へ転職し日勤のみの規則的な勤務になれば、周囲に負担をかけることが少なくなり、無理なく家庭と仕事を両立できるようになります。

精神的・体力的な負担が少ない

企業看護師には、夜勤や早番など変則的な勤務は原則ありません。また、医療機関での勤務のように1日中立ち歩いて働くことは少なく、PCでのデータ管理など、デスクワークが中心となります。

医療行為がほとんどなく、命の危険のある患者の対応をはじめとするプレッシャーのかかる仕事も少ないので、精神的なゆとりも持てるでしょう。体力的にも心理的にも負担が少なく、ワークライフバランスを保ちやすいことは大きなメリットです。

人間関係の悩みが減る

病院のように多くの看護師が一緒に働く環境とは異なり、企業看護師は1~2人体制の少数で仕事を行います。1人で業務を管理したり、少人数でやりくりをしたりするため、人間関係の悩みが生まれにくいこともメリットです。

また、病院で働く看護師のように命を預かるプレッシャーや、時間に追われる忙しさを感じることが少なく、ゆとりを持って仕事に取り組めます。人間関係においてもピリピリとした雰囲気になりづらいでしょう。

待遇面が良くなる

企業看護師のボーナスは、ほかの社員と同様、企業の業績などに応じて決定されます。そのため、企業によっては医療機関よりも年収が高くなることもあるでしょう。特に治験に対する専門知識を必要とする治験コーディネーターや臨床開発モニターは、年収が高くなる傾向にあります。

また、大企業では各種手当やリフレッシュ休暇など、手厚い福利厚生を用意している職場もあります。福利厚生を上手に活用していくことで、より働きやすさを感じられるでしょう。

企業看護師を目指すときの注意点

ここまで、企業看護師の働き方やメリットについて解説してきました。企業看護師への転職は、実際にはよいことばかりではありません。転職を考える際には、次の注意点を把握しておきましょう。

・給与が下がる可能性がある
・医療機関への復帰が難しい
・就職のハードルが高い

それぞれ解説します。

給与が下がる可能性がある

夜勤のある病院や介護福祉施設で働く場合、夜勤手当が支給されますが、日勤のみの勤務である企業看護師には手当がありません。転職する企業によっては、給与が下がる可能性も考えられます。

また、企業に転職すると、医療機関では必要なかったPCスキルやビジネスマナーを一から学ばなくてはいけない場面も出てきます。勉強の必要性や忙しさを加味すると、給与が低いと感じることもあるかもしれません。

医療機関への復帰が難しい

企業看護師は、病院で働く看護師のように高度な医療的ケアは行いません。そのため、病院に勤務し続けた場合と比較すると看護技術は衰えてしまうでしょう。

企業看護師から再び医療機関へ復帰しようと思ったとしても、技術的な面から自信がなくなったり、採用されにくくなることもあります。また、いざ病院やクリニックに復帰する際には、感覚を取り戻すために苦労する人もいるかもしれません。

就職のハードルが高い

企業看護師は、就職が難しいことも注意点のひとつです。実際に、企業看護師を採用している企業はさほど多くなく、公表される求人数が少ないことが現実です。求人が見つかったとしても、各企業1〜2人と少人数の採用枠であり、競争倍率が高くなります。

また、転職できても即戦力としてPCスキルやビジネスマナーが求められます。採用されるまでのハードルが非常に高いといえるでしょう。

まとめ

この記事では、企業で働く看護師の仕事内容や、企業看護師へ転職することのメリット、目指す際の注意点を紹介しました。

企業看護師としての働き方には、子育てと両立しやすい、精神的・体力的な負担が少ない、待遇面が良くなるなど、魅力的なメリットがあります。一方で、求人数が少ないため競争率が高く、転職は簡単ではありません。転職を成功させるためには、志望先の企業の事業内容を研究したり、面接対策をしっかり行ったりすることが重要となります。

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