HCUはどのような病床?ICUとの違いや看護師の仕事を解説

HCU(高度治療室)には、重症化や急変のリスクが高く、命に危険のある患者が多く入院しています。とはいっても、高度医療を提供する医療機関の中には、ICUやSICUなど似た役割のある病床も多く、どのような違いがあるのかよく理解できていない人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、HCUの概要やICUとの違い、HCU以外のおもな集中治療室について解説します。HCUの看護師に求められる役割も伝えるので、参考にしてください。

HCU(高度治療室)とは

HCUの特徴や概要、ICUとの違いを解説します。

一般病棟とICUの中間病床

HCUとは「High Care Unit」の略で、高度治療室のことを指します。一般病棟とICU(集中治療室)の中間にあたり、重症化や急変のリスクの高い患者や手術後の管理が必要な患者を受け入れ、安全で質の高い医療サービスの提供や、高度な看護を実践します。

HCUでは、ICUでの超急性期治療によって病状が回復した患者や一般病棟での治療では不十分な患者のケアを行います。なお、急性期だけでなく回復期や終末期患者も対象です。

また、HCUでは医師や看護師のほか、臨床工学技士や薬剤師・理学療法士・栄養士・ソーシャルワーカーなど、多職種が連携して患者のケアにあたります。

HCU入室対象となる疾患・状態

HCUには、特定の診療科目だけでなく、さまざまな疾患の患者が入院しています。HCUの入室対象となる疾患・状態は、主に以下のとおりです。

・急性心不全
・心筋梗塞
・大動脈解離
・脳血管障害 (くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)
・意識障害
・心肺蘇生後
・ハイリスクな手術後の管理(肺がん、血管バイパス術など)
・救急疾患(多発外傷、中毒など)
・人工呼吸器管理、透析治療などの集中治療を要する場合

重症化のリスクや、大きな手術後の経過観察を必要とする患者がHCU入室対象です。医療機関によって、HCUの入室基準は異なるため、上記に該当する患者でも急変のリスクが低い場合、一般病棟に入院する場合があります。

HCUの用途/役割

HCUへは、救急外来や手術室から直接入室する場合、ICUから移動してくる場合などがあります。患者の回復状態によって、ICUからHCUへ入室し、一般病棟へ移動するのが一般的な流れです。

例えば、HCUでは診療報酬の加算日数が21日までに設定されています。なお、ICUの加算日数は14日です。そのため、ICUで14日間治療しても全身状態が不安定な場合、HCUに移動後7日間治療し、一般病棟へ転室するという流れになります。

より長期に手厚い治療を提供することで、ハイリスクな状態からの救命だけでなく、早期回復や社会復帰を目標に支援しています。

ICU(集中治療室)との違い

ICUは「Intensive Care Unit」の略で、集中治療室のことです。HCUと比べて命の危険性が高く、医師、看護師による24時間体制でのより高度な治療や看護を必要とする患者が入室します。

日本集中治療医学会では、ICUを以下のように定義しています。

”集中治療のために濃密な診療体制とモニタリング用機器、また生命維持装置などの高度の診療機器を整備した診療空間”

出典:日本集中治療医学会

ICUに入室している患者は重症度が高く、いつ急変するか分からない状態にあります。そのため患者2名に対し、看護師1名と手厚い看護配置基準になっています。一方、HCUでは重篤な状態を脱している患者を対象とするため、患者4名に対し、看護師1名の配置です。

また、ICUではベッド上安静が必要な患者が大半ですが、HCUには歩行可能な患者もいます。

HCU以外のおもな集中治療室

集中治療室(Care Unit)は、HCUやICU以外にも、どのような疾患・患者を対象とするかによって、以下のような種類に分けられます。

SICU(外科系集中治療室)

SICU(Surgical Intensive Care Unit)は外科系集中治療室のことで、おもにハイリスクな手術を受けた患者の術後管理を担います。

人工呼吸器や血液透析など、高度な医療機器を必要とする患者に対し、24時間体制でケアを提供します。

CCU(循環器疾患集中治療室)

CCUは、主に心筋梗塞や狭心症の緊急処置や管理が必要な患者に対し、24時間体制でケアを提供する集中治療室です。

人工呼吸器や補助循環装置などを装着して、高度な治療を提供します。

SCU(脳卒中集中治療室)

SCUは、主に脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などを発症した患者に対し、専門医療スタッフがチームを組んで、発症早期から24時間体制で集中的にケアする治療室のことを指します。

脳卒中は特に、発症直後から的確な診断に基づく治療開始が求められます。脳卒中の初期段階から、血栓溶解療法などの治療を提供します。

NCU(脳神経外科集中治療室)

NCUは、くも膜下出血・脳出血などの脳卒中患者の手術前後に集中的なケアを行う治療室です。SCUの役割をあわせもつほか、SICUと領域が重複する場合があります。

NCUでは、手術後早期からリハビリを開始します。作業療法士・理学療法士・言語聴覚士などリハビリ専門職と共に、身体機能の維持・回復を目指します。

RICU(呼吸器疾患集中治療室)

RISUは、急性呼吸不全、慢性呼吸不全の急性増悪・喘息重篤発作・心不全・大きな手術後の患者に対し、集中的なケアを行う治療室です。医師など多職種と連携し、人工呼吸器管理・循環動態管理など、高度な治療を提供します。

PICU(小児集中治療室)

PICUは、小児患者を対象とした治療室です。外科や内科など診療科目を問わず、人工呼吸器をはじめ、体外循環補助や血液浄化療法などの高度な治療を必要とする子供たちの治療・看護、本人や家族のサポートを行います。

MFICU(母体・胎児集中治療室)

MFICUのMは母親、Fは胎児を表しており、周産期において、妊娠中毒症や多胎妊娠といったリスクのある妊婦や病気をもつ胎児を受け入れる治療室です。

母体と胎児それぞれの病態に応じて、小児科やNICUなどと連携しつつ、治療や看護を提供します。

NICU(新生児集中治療室)

NICUは、未熟児や先天奇形などのある新生児の治療やサポートを集中的に行う治療室です。早産児や出生時体重1000g未満の超低出生体重児、先天性心疾患、呼吸障害などをもつ新生児を受け入れます。

また、NICUの後方病床としてGCU(回復治療室)があり、NICUでの治療・看護が終わった後に、引き続き治療・看護を行います。

HCUの看護師の役割

HCUの看護師の役割は、以下5つです。

● 医療機器の管理・容態のモニタリング
● 異常・急変対応
● 日常的ケア
● 心理的ケア
● 一般病棟への転棟や退院支援

それぞれ解説します。

医療機器の管理・容態のモニタリング

HCUの看護師の役割として、患者を取り巻く医療機器の管理やモニタリングは重要です。

HCUに入室している患者は重症度が高く、心電図モニターや人工呼吸器など、循環動態を管理するための医療機器が装着されていることがほとんどです。医療機器の設定は患者に適しているか、誤作動はないかなど、正確に把握する必要があるでしょう。

また、医療機器の波形や数値だけで判断せず、五感を使って患者の状態観察を行う力も求められます。

異常・急変対応

患者の状態に異変がある場合、まずは医師への迅速かつ正確な報告をしなければなりません。医師の指示のもと、採血などの処置や投薬・補液、輸血などの処置を行います。必要に応じて、心臓マッサージや挿管介助などの救命処置も担います。

日常的ケア

HCUでは全介助の患者が多く、全身清拭やオムツ交換などの日常ケアも看護師の役割です。

ICUに比べて重症度が低いため、歩行可能な患者がいる場合もあります。歩行器などを使用している場合、側で見守ったり、膝折れしないよう支えたり、転倒防止のための対策なども必要とされるでしょう。

心理的ケア

患者や家族に対する心理的ケアも、HCUの看護師の大きな役割だといえます。

重症度や急変のリスクが高いHCUに入室している患者や家族は、今後の見通しに対する不安を強く抱く傾向にあるため、精神的な関わりが求められます。

特に急変時は、突然の連絡に動揺する家族は少なくありません。生命の危機に直面した患者の家族に対する心理的サポートも重要な役割の1つです。

一般病棟への転棟や退院支援

患者の状態や回復状況に合わせて、一般病棟への転棟や退院へ向けた支援を行います。

状況によって、医師にリハビリオーダーを依頼し、理学療法士に介入してもらう必要があるでしょう。また、入院時からソーシャルワーカーに介入してもらい、早期からの退院調整を行うこともあります。転棟の際、一般病棟の看護師へ、病状や今後の方針などの申し送りを行います。

HCUの看護師に求められること

HCUの看護師に求められることは、主に以下の通りです。

● 判断力・観察力
● 学習意欲
● 体力
● 精神的な強さ

それぞれ解説します。

判断力・観察力

HCUでは、患者の状態を常に観察し、異変時には迅速な対応が求められます。例えば、心電図モニター波形が変化した場合、医師への連絡が必要な状況かどうか、速やかに判断しなければなりません。

患者の意識レベルが低下した場合、血圧に変動はないか、瞳孔の左右差や麻痺・痙攣などはないかなどを観察したのち、医師へ速やかに報告する必要があります。患者に適した治療を提供するために、迅速な観察力や判断力は必要不可欠です。

学習意欲

HCUには診療科目を問わず、さまざまな疾患の患者が入院しているため、看護師にも幅広い知識や処置技術が求められます。

HCUでは人工呼吸器をはじめ、多くの医療機器を用いる患者の看護に関わらなければなりません。医療機器や治療法は進化し続けているため、常に知識や技術を学んでいく積極性が必要だといえるでしょう。

体力

HCUは緊急入院の受け入れや急変の対応など、予定外の処置や対応が必要となるケースが少なくありません。また、意識レベルの低い患者や体動困難な患者も多いため、ハードな業務になりやすい傾向にあります。

そのため、HCUで働く看護師には、十分な体力が欠かせません。

精神的な強さ

HCUで働く看護師には、精神的な強さが求められます。HCUには、重症度や急変のリスクが高い患者が多く、今までの治療や看護をしても報われないこともあり、精神的なストレスを抱きやすいでしょう。

また、忙しい業務のなかでも勉強しなくてはならず、休日もゆっくり休めないことも考えられます。精神的な強さやストレスマネジメントは必須といえます。

まとめ

この記事では、HCUの概要やICUとの違い、HCU以外のおもな集中治療室、HCUの看護師に求められる役割をお伝えしました。

HCUは、ICUと一般病棟の中間に位置し、重症化や急変のリスクの高い患者や、手術後の管理が必要な患者に対し、安全で質の高い医療サービス提供や看護ケアを実践する病棟です。

ICUに比べて重症度は低いとはいえ、いつ急変するか分からない患者が入室している場合もあります。そのため、さまざまな疾患や医療機器に対する知識を習得し、急変や状態の変化に対応できるスキルが必要だといえるでしょう。

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