看護師と看護士はどちらが正しい?表記の違いや間違えやすい看護職の呼称について解説

看護師について調べる際に、「看護婦」や「看護士」という表記を目にして疑問に感じた人もいるのではないでしょうか。かつては女性の看護師を「看護婦」、男性の看護師を「看護士」と呼んでいましたが、現在では「看護師」に統一されています。

この記事では、看護師の呼び方の違いや呼び方が変わった経緯について解説します。看護職の種類や資格、キャリアアップの方法についても紹介しているので、看護師について気になる人は参考にしてみてください。

看護師と看護士の違い

看護を行う者である「かんごし」の正式名称は「看護師」ですが、かつては「看護婦」や「看護士」と呼んでいました。看護師と看護士の違いや、名称が変化した流れについて解説します。

看護士は男性看護師のこと

かつては女性看護師を「看護婦」、男性看護師を「看護士」と区別して呼んでいました。
日本において看護婦という名称が定着したきっかけは1915年(大正4年)に「看護婦規則」が制定されたことです。看護婦規則では、看護師の資格を持つ人は女性でなければなリませんでした。

看護の現場では主に女性が活躍していましたが、徐々に男性看護師が現れるようになり、1968年(昭和43年)の保健婦助産婦看護婦法改正後に正式に男性看護師が登場します。当時、男性看護師は看護士と呼ばれていました。

現在は看護婦、看護士という読み方の区別が廃止され、男女ともに「看護師」に統一されています。
参照元:看護の歴史 | 東京有明医療大学

いつから「看護師」が使われている?

看護婦、看護士という名称から「看護師」という呼び方に変わったきっかけは、2001年の法改正により「保健婦助産婦看護婦法」から「保健師助産師看護師法」に名称が変更されたことです。法改正の翌年である2002年には、性別による呼び方の区別が廃止され、男女ともに看護師という呼び方に統一されました。

男女格差の問題や、職業における男女平等の考え方が変化したことがその理由として挙げられます。
参照元:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

看護士を使ってはいけない?

看護師という呼び方に統一され約20年が経過しています。しかし、現在も「看護婦さん」と呼ぶ人がいたり、「看護士」と表記されていたりすることがあります。

看護士という呼び方は、差別的な表現ではないため、使用することに問題はありません。しかし、現代では基本的に看護婦、看護士という名称は使用しないと認識しておきましょう。

看護職の4つの仕事

看護職には次の4つの職種があります。

● 看護師
● 准看護師
● 助産師
● 保健師

職種により、それぞれ必要な資格や業務内容が異なります。看護職の4つの職種について、それぞれの仕事内容を解説します。

看護師

看護師は、看護職における代表的な職業です。医療現場において、病気や怪我で療養中の患者の看護や医師の診察のサポート、身の回りの世話などを行います。

リハビリスタッフやケアマネジャー、臨床心理士などほかの職種と連携し、患者を取り巻く環境を幅広くサポートする重要な立場を担うことも多く、やりがいを感じやすい仕事です。
看護師の主な勤務先は、次のとおりです。

● 病院
● クリニック
● デイサービス
● 訪問看護ステーション
● 健診センター
● 企業 など

看護師として働くためには、看護を学べる大学または専門学校で3年以上の教育を受けたのちに看護師国家試験に合格し、看護師免許を取得する必要があります。

准看護師

准看護師は、看護師と同様に、医療現場で患者のケアをしたり、医療行為を行ったりします。基本的な業務は看護師と変わりませんが、医師だけでなく、看護師の指示がなければ処置ができないという規定があります。

看護師の資格は国家資格ですが、准看護師の資格は都道府県知事により発行される免許です。准看護師試験を受験するためには、高校の衛生看護科で3年過程を修了するか、准看護師養成所で2年課程を修了し、各都道府県で実施される試験に合格する必要があります。

保健師

保健師は、保健所や学校や企業などで、健康指導や保健指導を実施する職種です。保健師になるためには、保健師国家試験に合格し、保健師国家資格を取得する必要があります。

保健師資格を得るためには看護師の資格を持っていることが必須の条件です。看護師からのキャリアアップとして保健師を目指す場合や、4年制の大学で看護師免許と一緒に取得される場合もあります。
保健師の勤務先は、主に次の職場です。

● 保健所・保健センター
● 病院
● 地域包括支援センター
● 企業
● 学校 など

保健師の仕事内容や役割は、勤務先により大きく異なります。また、保健師は企業に勤める「産業保健師」、学校に勤める「学校保健師」など、勤め先により呼称が異なることも特徴です。

助産師

助産師は、看護職のなかでも分娩の介助など、産婦人科関連の医療行為に関わる職種です。分娩の介助だけでなく妊娠中の体調管理や出産後の乳房ケア、育児指導など周産期の母子に幅広く関わります。助産師の資格も国家資格です。取得するために実習により経験を積み国家試験に合格する必要があります。

なお、現在の日本の法律では、助産師は女性限定と規定されており、男性が助産師資格を取得することはできません。
助産師の主な勤務先は次のとおりです。

● 病院
● クリニック
● 助産院
● 保健センター など

助産師は、看護職のなかで唯一独立し開業が可能な職種です。経験を積んだ助産師は、助産院を開業できます。

看護師の種類と特徴

看護師は、特定の研修を受けたり試験を受けたりすることにより、看護のスペシャリストとしてさらなる資格を取得できます。看護師の取得できる資格の種類と特徴について解説します。

特定看護師

特定看護師制度は、2015年に開始した比較的新しい制度です。特定行為研修と呼ばれる研修を修了した看護師は、特定看護師として高度な相対的医行為(特定行為)を医師の指示なく実施できるようになります。

特定看護師の活躍により、医療行為の提供にタイムラグが生じにくく、患者の苦痛を軽減したり回復を早めたりできると期待されており、特定看護師は医療現場にとって頼もしい存在です。

特定行為には、たとえば胸腔ドレーンの抜去や、末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入、直接動脈穿刺法による採血など21区分38行為が挙げられ、それぞれの区分ごとに研修があります。

研修を修了し試験に合格することにより、特定看護師として受講した区分の特定行為の実施が可能となります。

診療看護師

診療看護師(Nurse practitioner:NP)とは、5年以上の看護師実務経験を積んだのちに大学院修士課程での医学教育を修了し、日本NP教育大学院協議会の実施するNP資格認定試験に合格した看護師のことです。

診療看護師は、患者の病状を正確にとらえ、検査や処置を実施したり、患者や家族に説明を行ったりできます。医師の不在時であってもスムーズな診療を行えるよう立ち回れるのです。
また、診療看護師は高度な医療行為を実践できます。具体的には、21区分38項目のすべての特定行為を行えるほか、医師からの直接指示により、腹腔穿刺や気管内挿管など、包括的医療行為を実践できます。

専門看護師

専門看護師は、特定の看護分野全体のスペシャリストとして活躍する看護師です。がん看護、精神看護、地域看護など、13の専門分野の資格があります。

専門看護師に求められる役割は幅広く、臨床看護実践のほか、患者とその家族に対する全体的なケアや、倫理的問題の解決、看護の向上を目的とした教育、研究活動など多岐にわたります。職場内だけでなく、地域や関連のあるほかの施設と連携を行う場合もあるでしょう。

専門看護師になるためには、日本看護協会専門看護師認定審査に合格し、特定の専門看護分野において卓越した看護実践能力を持つことを認められなければなりません。また、専門看護師認定審査を受けるためには、看護師として5年以上の実務経験を経たのちに、看護系の大学院で修士課程を修め、必要な単位を取得する必要があります。

認定看護師

認定看護師は、看護現場で特定の専門分野におけるスペシャリストとしての業務を行う看護師です。緊急看護、皮膚・排泄ケア、集中ケア、緩和ケアなど、専門看護師と比較するとより限定的な21分野の認定資格があります。

高度な看護技術を生かした看護を実践したり、ほかの看護スタッフの指導に従事したりすることにより、医療現場全体の知識や技術の向上を目指します。

認定看護師になるためには、日本看護協会が定めている認定看護師教育を修了し、認定看護師認定審査に合格することが必要です。なお、認定看護師教育を受けるためには5年以上の実務経験、うち3年以上は認定看護分野に従事していることが必須であると規定されています。

看護師の職種や資格とキャリアの考え方

ここまで見てきたように、看護職にはさまざまな種類があり、特定のスペシャリストとして働くための資格も数多くあります。

資格の種類や看護師として勤務する場所により働き方は大きく異なるため、自分自身がどのように働きたいのか、キャリアプランを立てることは非常に重要です。
ここからは、看護師の職種や資格、キャリアの考え方について解説します。

准看護師は国家資格取得を目指す

准看護師として働きながらキャリアアップを図る人は、まずは看護師国家資格を目指しましょう。
看護師は厚生労働大臣が発行する国家資格のひとつですが、准看護師は都道府県知事が発行する免許です。

保健師や助産師などのほかの看護資格や、認定看護師や専門看護師などキャリアアップのための資格を目指すには、看護師国家資格が必須となります。

准看護師から看護師になるためには、看護師学校養成所の2年課程を修了し、看護師国家試験に合格する必要があります。看護師学校養成所の2年課程には、定時制や通信制があり、准看護師として病院に勤務をしながら看護師国家試験に挑むことも可能です。

看護師としてステップアップを目指す

看護師としてステップアップを目指したいなら、キャリアプランを定めましょう。看護師のキャリアプランには、大きく分けて次の3つの選択肢が挙げられます。

● スペシャリスト
● ジェネラリスト
● マネージャー

スペシャリストとは、専門看護師や認定看護師など、特定の分野に関する知識や技術、経験を持ち、その分野で活躍できる看護師のことです。
一方、ジェネラリストは広い範囲で一定の基準の知識と技術を持つ看護師のことを指します。幅広いスキルを持つことにより、いろいろな場面に臨機応変に対応し活躍できるでしょう。

マネージャーは、看護部長や看護師長をはじめとする、スタッフの管理や教育、マネジメントを行う看護師です。組織の管理者としてリーダーシップを発揮する力が必要となります。

看護師以外の道でキャリアを築く

病院で働く看護師以外の道でキャリアを築く選択肢もあります。
助産師や保健師など、同じ看護職でも業務内容の異なる専門資格の取得を目指せば、将来は助産院を開業したり、保健センターや企業でキャリアを積んだりと働き方の選択肢が大きく広がるでしょう。

病院以外の職場に転職する場合にも、認定看護師や専門看護師など、特定分野のスペシャリストとしての資格は有利に働きます。

また、看護職以外でも、ケアマネジャーや臨床心理士、養護教諭など、看護師の経験を生かして働ける資格や職業は数多くあります。

まとめ

この記事では、看護師の呼び方の違いや看護職の種類や資格、キャリアアップの方法について紹介しました。
看護師と看護士は、どちらも看護を行う人を指しますが、2002年の法改正により現在は「看護師」に統一されています。看護職には准看護師や保健師、助産師という4つの資格があり、それぞれ業務内容や活躍の場が異なります。

また、看護師にはさまざまなキャリアアップのルートがあります。認定看護師や専門看護師の資格をとり専門分野のスペシャリストになったり、病院以外の職場でキャリアを築いたりすることも可能です。

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