夜勤で寿命は縮む?健康リスクや業務への影響、健康維持の方法を紹介

夜勤で寿命は縮む?健康リスクや業務への影響、健康維持の方法を紹介

24時間365日体制で患者さんに医療を提供するために必要な夜勤シフト。病棟勤務の看護師につきものの夜勤ですが、心身の負担を感じている人は多いのではないでしょうか。

本記事では、看護師を取り巻く夜勤の現状や夜勤による健康・寿命への影響、対処法について解説します。

夜勤で寿命が縮むといわれている理由

人間の体は、「サーカディアンリズム(体内時計)」に基づいて機能しており、日中に活動して夜間は眠るというのが自然なサイクルです。

夜勤により夜に活動すると、本来の睡眠パターンが崩れ、睡眠の質低下、疲労の蓄積、ストレスの増加など、心身の健康に悪影響がもたらされます。サーカディアンリズムの乱れが長期にわたって続くことで、内分泌ホルモンや代謝、免疫にも影響が及び、寿命を縮める要因となりえます。

とくに2交代制で働く看護師の場合、夜勤に長時間労働も重なるため、ときには自身の命を脅かす結果にもなります。
2008年に大阪高裁が下した「看護師の過労死事件」では、長時間に及ぶ時間外労働に加え、交代制勤務による夜勤もまた過労死の危険因子として指摘されました。

夜勤を担当する看護師の現状

夜勤を担当する看護師の現状

1992年に制定された「看護師等の人材確保に関する法律」では、看護師の業務負担の軽減のために、「3交替制の夜勤回数は月8回(2交代制の場合は月4回)」とされました。

一方、日本看護学会の「看護職の夜勤・交代制勤務ガイドライン」では、次の内容が報告されています。

● 3交代制の平均夜勤回数は7.8回で、平均を超えている病院は34.5%
● 2交代制の平均夜勤回数は4.5回で、平均を超えている病院は57.2%

上記から、人材不足に悩む医療機関は多く、看護師がそのしわ寄せを受けていることが浮き彫りになりました。

このような夜勤の状況のなか、近年、看護師の心身の負担も明らかになっています。日本医労連が行った「看護師の労働実態調査」によると、夜勤に入る看護師の8割以上が慢性疲労を抱えていることが報告されました。

また、看護師仕事を辞めたいと感じる看護師は、夜勤業務を行っている人が相対的に多く、疲労の蓄積や寿命への影響を心配する声も挙がっていました。上記から、看護師にとって夜勤は、疲労だけでなくその先の離職の原因にもなることが伺えます。

海外と比較した日本の看護師の夜勤事情

現在の日本の看護師の夜勤体制には、3交代と2交代の2種類がありますが、国際的にみると特殊なケースといえます。
もともと日本の看護師の夜勤は3交代制が主流でしたが、1992年の厚生労働省からの通達をきっかけに、2交代制を導入する病院が急激に増えました。

国際労働機関(ILO)の看護職員条約によると、1日の労働時間の上限は12時間(超過勤務を含む)と定められています。そのため海外では、看護師の勤務に2交代制を導入しており、12時間を超える勤務はほとんど行われていないのが現状です。

しかし日本では、「看護師の仕事は夜勤がつきもの」という考えが広まっており、夜勤による健康リスクが配慮されずに、2交代制による16時間夜勤が生まれる結果になっています。

夜勤を続けることで起こる健康被害

夜勤を続けることで起こる健康被害

長期間、夜勤のある生活を送ることで、看護師自身の健康にさまざまな弊害が生じます。

生活リズムの乱れ

夜勤により睡眠時間が不規則になると、生活リズムが崩れやすくなります。また夜勤のある看護師は、勤務帯に関わらず、疲労やストレスが蓄積している状態になります。

心身の疲労が続くことで、食生活や運動がおろそかになるリスクも高まるでしょう。

睡眠の質の低下

夜勤により体内時計に逆らった生活が続くと、睡眠のリズムにも悪影響が及びます。夜間の労働は睡眠物質である「メラトニン」の分泌を抑制するため、睡眠リズムが崩れ、睡眠の質低下を引き起こします。

また、夜間の睡眠は、深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い睡眠の「レム睡眠」が交互に起こります。
しかし夜勤明け後の昼間の睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠のバランスが崩れ、睡眠の質が低下している状態です。そのため夜間と同じだけの心身の回復効果を得られません。

発がんリスクが高くなる

WHOの国際がん研究機関は、体内時計の乱れをともなう交代制勤務に発がん性がある(グループ2A:発がん性がおそらくある)ことを認めています。

具体的には、夜間労働で照明に当たることで、メラトニンの分泌抑制が起因するためと指摘しています。

生活習慣病の罹患リスクが高くなる

夜勤勤務は糖代謝や脂質代謝に影響を与えるため、糖尿病や脂質代謝異常といった生活習慣病の罹患リスクを高めます。

また、直接的な原因でない場合も、夜勤による疲労の積み重ねは、外食や中食が増える、運動時間が減るなど生活の質の低下を招き、生活習慣病の罹患要因になることがあります。

ホルモンバランスの崩れ

夜勤に従事する看護師は、ホルモンバランスの乱れによる影響も受けます。近年は男性看護師も増えているものの、看護師の9割は女性です。

夜勤が引き起こすホルモンバランスの乱れに関しては、月経に関連した症状が多く、痛み止めの内服率も高い傾向があります。またアメリカで行われた調査では、シフト制勤務が長期にわたるほど、乳がんの罹患リスクが高まることが報告されています。

夜勤による私生活への影響

夜勤を含む交代勤務で働く看護師は、勤務日や勤務時間が不規則です。家族や友人と自由時間が異なることが多く、同じように生活できない、一緒に出かけられないといった状況がしばしば起こります。

また夜勤後は睡眠に費やす看護師も多く、プライベートを充実させることが困難になることもあります。

夜勤を続けながら健康を維持する方法

夜勤を続けながら健康を維持する方法

病棟で働く看護師にとって、夜勤のある働き方は避けて通れないものです。健康を維持しながら夜勤をするために、健康管理を入念に行いましょう。

夜勤前に疲労回復を図る

夜勤に入る前には、意識的に休息やリラックスの時間を取るようにしましょう。

夜勤前は仕事への緊張感やストレスが高まりやすい状態です。交感神経の興奮が続くことで、胃腸の不調や冷えを訴える看護師は多くいます。看護師の夜勤の対処法に関する調査では、勤務前のリラックス行動が胃腸機能の緩和に良いという結果が出ています。

夜勤中に仮眠を適度にとる

夜勤中は仮眠時間にしっかり休息を取るようにしましょう。仮眠を取ることで、疲労や眠気の軽減、集中力の維持のほか、体内時計の乱れを抑える効果も期待できます。

とくに夜勤が長時間に及ぶ2交代勤務では、2時間以上の仮眠を取ることが推奨されています。夜間に照明を浴びるとメラトニンの分泌が抑えられてしまうため、暗い仮眠室で一定時間、休息を取ることが大切です。

生活リズムを一定にする

シフト制で働く看護師は、夜勤前に限らず、日頃から生活リズムを整えるようにしましょう。

夜勤中は睡眠不足の状態であるため、夜勤明けに2時間ほど眠ります。起床後の日中は活動して、夜はいつもより少し早めに就寝するようにすると、生活リズムを戻しやすくなります。

夜勤明け直後から活動的に過ごす人も多いですが、まずは生活リズムの調整や疲労回復に努めましょう。

食事の質を向上させる

夜勤により体調を崩さないようにするためには、栄養バランスの整った食事を摂ることも大切です。看護師として働きながら食事に気を遣うのはむずかしいものですが、数日単位で栄養バランスを整えるようにするとよいでしょう。

また夜勤中はふだんと同じように食事を摂るようにします。3交代の夜勤の場合は、夕食を取ってから業務に入ります。2交代で夜勤の時間が長い場合でも、休憩時間を利用していつもの夕食時間に近い時間帯に食事を摂るようにしましょう。

適度な運動を続ける

日々の生活のなかで、運動習慣を取り入れることは、体調管理に役立ちます。運動すると、交感神経が活発になり、ストレス緩和が図れたり、シフト入りがスムーズになったりします。

日頃からジョギングや水泳などの有酸素運動を20分程度行ってみましょう。運動時間がない人は、駅まで歩く、自転車通勤をするのもおすすめです。激しい運動をすると目が冴えてしまうため、夜勤前に避けましょう

まとめ

患者さんに24時間365日継続して医療を提供するには、看護師ら医療スタッフのシフト勤務が欠かせません。
夜勤により心身への負担が積み重なることとは裏腹に、医療職である看護師の健康管理は一人ひとりに任されている状況です。

夜勤のある勤務が長期に及ぶと、心身の疲労が蓄積し、仕事でミスが増えたり、看護師自身の健康や寿命を脅かしたりする結果になります。

とくに、年齢を重ねるほど、体力の低下やライフスタイルの変化から、夜勤の負担を大きく感じるようになるものです。看護師として健康的に働きたい人は自分に合った勤務体制の職場を検討してみるとよいでしょう。

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参考:
日本医労連ほか/「2022 年看護職員の労働実態調査」記者発表資料
日本医療労働組合連合会/ILO夜勤条約(171号条約・178号勧告)
「夜間の看護実践」の現状と課題
夜勤・交代制勤務に従事する看護師の疲労と対処
日本看護協会/夜勤・交代制勤務に関するガイドライン

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