クリニカルラダーは看護師の転職に有利?制度の特徴や注意点とは

看護師の評価システムとして、クリニカルラダーを採用する職場も多いのではないでしょうか。その一方で、クリニカルラダーとはどういったものなのか、言葉は聞いたことがあっても、よく分からないという人もいるかもしれません。

クリニカルラダーは、看護師の能力開発や評価システムの1つで、転職の際にも活用できます。

この記事では、クリニカルラダーの概要や目的、5つのレベルによる評価方法を解説します。また、クリニカルラダーが看護師の転職に有利な理由、活用する際の注意点を解説します。

クリニカルラダーの概要や活用方法を知り、転職を成功させたい人はぜひ参考にしてください。

看護師のクリニカルラダーとは

まずは、看護師のクリニカルラダーとは具体的にどういったものなのか、詳しくみていきましょう。

看護師の実践能力を評価するシステム

クリニカルラダーとは、米国で1980年代に導入された、臨床の場で必要な看護師の能力を段階的に示したシステムです。日本では、2016年に日本看護協会によって公表されました。

ラダーには、英語で「梯子(はしご)」の意味があります。クリニカルラダーでは、梯子を登っていくようなイメージで看護実践能力を段階的に表してあり、各段階で期待される能力や目標の達成度によって評価されます。

クリニカルラダーが開発された目的

クリニカルラダーが開発された目的は、主に以下の3つです。

● 全ての看護師に共通する看護実践能力の指標の開発と支援
● 看護実践能力の適切な評価による担保および保証
● 患者や利用者等への安全で安心な看護ケアの提供

一般的に、多くの病院で日本看護協会のクリニカルラダーが用いられていますが、独自のラダーを定め、活用している病院や介護福祉施設は少なくありません。

病院だけでなく、高齢者施設・訪問看護ステーションなど、あらゆる場で共通する看護実践能力を身につけ、評価されることで、看護業界全体の質の向上が期待できるでしょう。

キャリアラダーの違い

クリニカルラダーが看護師の能力を段階的に評価・育成するシステムであるのに対し、キャリアラダーは、キャリアアップを目標としたシステムにあたります。

キャリアラダーは、看護実践能力に加え、看護管理者や専門・認定看護師などのスペシャリスト、管理職などのマネジメント能力を段階的に発展させるシステムです。

とはいえ、職場によっては、クリニカルラダーもキャリアラダーも同じ評価システムとして使用されることがあります。その一方で、日本看護協会が開発したクリニカルラダーを取り入れつつ、病院独自のキャリアラダーを作成しているケースも少なくありません。

クリニカルラダーの5つのレベルと目標

クリニカルラダーでは、以下4つの看護実践能力に焦点を当て、それぞれレベルⅠ〜Ⅴまでの段階で評価します。

能力の構成要素 能力の構成要素の定義
ニーズをとらえる力ケアの受け手をとらえ、判断し、その人に適した方略を選択する
ケアする力 ケアの実施・評価を行う
意思決定を支える力 ケアの受け手が立ち会う場面において、その人らしい選択ができるための意思決定を支える
協働する力 ケアの受け手を中心に、情報やデータを多職種間で共有し、ケアの方向性を検討・連携する

参照元:実践能力の核となる4つの力について

以下、レベル毎の定義と、実践能力に対応した目標を紹介します。

レベルⅠ

クリニカルラダーで示されるレベルⅠの定義は「基本的な看護手順に従い必要に応じ助言を得て看護を実践する」とされています。

4つの看護実践能力に対応したレベルⅠの目標は、以下の通りです。

レベルⅠの目標
ニーズをとらえる力 助言を得てケアの受け手や状況のニーズをとらえる
ケアする力 助言を得ながら安全な看護を実践する
意思決定を支える力 ケアの受け手や周囲の人々の意向を知る
協働する力 関係者と情報共有ができる

参照元:看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)

レベルⅠでは、指導者などから助言や指導を受けながら情報収集やケアができる、他職種との報告・連絡・相談ができる、といった行動目標が掲げられています。

レベルⅡ

クリニカルラダーで示されるレベルⅡの定義は「標準的な看護計画に基づき自立して看護を実践する」とされています。

4つの看護実践能力に対応したレベルⅡの目標は、以下の通りです。

レベルⅡの目標
ニーズをとらえる力ケアの受け手や状況のニーズを自らとらえる
ケアする力 ケアの受け手や状況に応じた看護を実践する
意思決定を支える力 ケアの受け手や周囲の人々の意向を看護に活かすことができる
協働する力 看護の展開に必要な関係者を特定し、情報交換ができる

参照元:看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)

レベルⅡでは、ケアの受け手の個別性を考慮しつつ情報収集や援助ができる、周囲の状況を把握して情報交換ができる、といった行動目標が掲げられています。

レベルⅢ

クリニカルラダーで示されるレベルⅢの定義は「ケアの受け手に合う個別的な看護を実践する」とされています。

4つの看護実践能力に対応したレベルⅢの目標は、以下の通りです。

レベルⅢの目標
ニーズをとらえる力 ケアの受け手や状況の特性をふまえた踏まえたニーズをとらえる
ケアする力 ケアの受け手や状況の特性をふまえた踏まえた看護を実践する
意思決定を支える力 ケアの受け手や周囲の人々に意思決定に必要な情報提供や場の設定ができる
協働する力 ケアの受け手やその関係者、多職種と連携ができる

参照元:看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)

レベルⅢでは、ケアの受け手の個別性を踏まえ、優先度の高いニーズを把握できる、潜在ニーズを察知し看護実践に反映できる、他職種へ積極的に働きかけて協力を求められる、といった行動目標となっています。

レベルⅣ

クリニカルラダーで示されるレベルⅣの定義は「幅広い視野で予測的判断をもち看護を実践する」とされています。

4つの看護実践能力に対応したレベルⅣの目標は、以下の通りです。

レベルⅣの目標
ニーズをとらえる力ケアの受け手や状況を統合しニーズをとらえる
ケアする力 様々な技術を選択し・応用し看護を実践する
意思決定を支える力 ケアの受け手や周囲の人々の意思決定に伴うゆらぎを共有でき、選択を尊重できる
協働する力 ケアの受け手を取り巻く多職種の力を調整し連携できる

参照元:看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)

レベルⅣでは、得られた情報を統合してニーズを把握できる、幅広い選択肢の中から適切なケアを提供できる、多職種間連携の必要性を理解し調整できる、といった行動目標が設定されています。

レベルⅤ

クリニカルラダーで示されるレベルⅤの定義は「より複雑な状況において、ケアの受け手にとっての最適な手段を選択しQOLを高めるための看護を実践する」とされています。

4つの看護実践能力に対応したレベルⅤの目標は、以下の通りです。

レベルⅤの目標
ニーズをとらえる力 ケアの受け手や状況の関連や意味をふまえニーズをとらえる
ケアする力最新の知見を取り入れた創造的な看護を実践する
意思決定を支える力複雑な意思決定プロセスにおいて、多職種も含めた調整的役割を担うことができる
協働する力 ケアの受け手の複雑なニーズに対応でいるように、多職種の力を引き出し連携に活かす

参照元:看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)

レベルⅤでは、複雑な状況を把握し、多様な状況やニーズに対応するためのケアを実践・評価・追求できる、多職種間の中心的役割を担うことができる、といった行動目標が掲げられています。

クリニカルラダーが看護師の転職で有利になる理由

クリニカルラダーは、以下のような理由で看護師の転職で有利になる場合があります。

● 自分の看護能力の証明になる
● 向上心や熱意のアピールにつながる

それぞれ解説します。

自分の看護能力の証明になる

クリニカルラダーは、個人の看護実践能力を客観的に評価するシステムです。そのため、転職時に自分の看護能力の証明になり、自己PRに活用できます。

クリニカルラダーは日本看護協会が開発したシステムのため、ほとんどの医療機関・介護施設において、同じ基準で評価されると考えられます。評価基準が働く環境に左右されにくく、転職先でも今の職場と同等の評価を得て働けるでしょう。

高い評価が獲得できている場合、面接において看護能力を評価され、採用されやすくなるでしょう。リーダーや主任などを目指した転職にもつながると想定されます。

向上心や熱意のアピールにつながる

クリニカルラダーで高い評価を獲得するためには、実務経験を積むだけでなく、研修や勉強会などへ参加する必要があります。

クリニカルラダーの評価は、自己研鑽の結果ともいえるため、これまで向上心や熱意を持って看護業務に携わってきたことをしっかり採用担当者にアピールできるでしょう。

クリニカルラダーの評価を活用するときの注意点

クリニカルラダーの評価を転職に活用するときには、以下の点に注意する必要があります。

● 勤続年数とは関係がないケースもある
● 評価されない項目がある
● 目標とする看護ケアと離れてしまう

それぞれ解説します。

勤続年数とは関係がないケースもある

クリニカルラダーは、本人の看護能力を評価するものであり、勤続年数が長いほど高い評価を獲得できるわけではありません。

経験年数が同じ看護師であっても、働いてきた診療科目や急性期・慢性期などの違いによって身につけられるスキルが異なります。そのため、いくら経験年数が長くても、看護実践能力を身につけられないケースもあるでしょう。

とはいえ、ニーズをとらえる力などは、新人看護師に比べて経験年数が長い看護師のほうがレベルが高くなるのは当然だといえます。

この場合、勤続年数が長いわりに評価レベルが低ければ、自己研鑽に取り組んでいないと思われ評価が下がるリスクがあります。

評価されない項目がある

クリニカルラダーは看護実践能力を評価するシステムのため、コミュニケーション能力などは評価の対象になりません。

そのため、患者さんとのコミュニケーションばかり重視していると、クリニカルラダーでは低い評価になってしてしまうケースがあり、個人の能力をきちんとアピールできない可能性があります。

看護師として、患者さんに優しく接したりコミュニケーションを図ったりすることを大切にしている人も少なくないでしょう。その場合、クリニカルラダーは「ヒューマンスキルに対する評価がない」と不満に感じるかもしれません。

目標とする看護ケアと離れてしまう

クリニカルラダーを導入している医療機関や施設においては、評価が給与や賞与などの査定に影響する場合があります。

患者さんよりも自分の評価を重視するようになると、目標とする看護ケアと離れたものになってしまいます。評価にとらわれすぎず「自分は患者にとってどんな看護師でありたいか」という意識を強く持つことが大切です。

まとめ

今回は、クリニカルラダーの概要や目的、4つの看護実践能力と5つのレベルによる評価方法を解説しました。

クリニカルラダーは自分の看護能力の証明にもなり、転職の際に活用できます。向上心や熱意のアピールにもつながるため、志望先の採用担当者にも好印象を与えられるでしょう。

とはいえ、経験年数が長いからといって評価が高くなるとは限らず、ヒューマンスキルを重視しすぎると評価が低くなってしまうことも考えられるため、注意が必要です。

クリニカルラダーの評価にとらわれすぎず、自分が理想とする看護観はしっかり持ちつづけることが大切です。

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